「災害派遣」の範囲どこまで? 新型コロナ対応追われる自衛隊 そもそものルールは…?

新型コロナ関連の災害派遣 どう考えるべき?

 しかし、今回の東京都知事からの要請による災害派遣について、たとえば、2020年4月10日(金)付毎日新聞のオンライン記事などにおいて、特に「非代替性」要件の観点から疑問を投げかける声も聞かれます。さらに、冒頭で触れた帰国者支援などを目的とする自主派遣についても、本当に都道府県知事からの要請を待つ余裕がないほどに事態が切迫していたのか、という点についても意見が分かれるところでしょう。

 自衛隊の活動が際限なく拡大すれば、訓練の実施や人員の疲労などに関して、その負担は日に日に増加していくことは想像に難くありません。さらに、北朝鮮によるミサイル発射や、オホーツク海や日本海、東シナ海において、航空自衛隊が連日緊急発進を行っているように、日本周辺の安全保障環境は決して緩やかとはいえません。

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新型コロナ対策のための災害派遣にて、検査結果待ち帰国者の宿泊施設における生活支援の様子(画像:統合幕僚監部)。

 そうしたなかで、河野防衛大臣が4月7日(火)の記者会見にて「(感染者の生活支援などについて)なるべくスムーズに、速やかに、民間の業者に移行できるものは移行していく(中略)なるべくスムーズに民間の方々に業務の移管をしていきたいと考えているところです」と発言しているように、民間業者で対応できる活動は民間に任せるというのもひとつの手段といえるでしょう。

 むしろ、この河野大臣の発言や、派遣期間の短さなどを勘案すると、今回の災害派遣は自衛隊による自治体や民間業者などへの感染症対策のノウハウ伝授を目的にしている、と考えることもできるかもしれません。実際に、防衛省と統合幕僚監部は、家庭でも実践できる新型コロナ対策をホームページ上で公開していますが、これはまさに自衛隊の感染症予防に関するノウハウを一般にも伝授することを目的としています。

 一方で、今回の新型コロナウイルス対応については、こうした危機対応に常に備え、かつ組織的に活動を行うことができる自衛隊に任せた方が、結果としてこれ以上の感染拡大を防ぐことができる、という見方もできるかもしれません。

【了】

【写真】新型コロナ対応のなか、日本近海に中国艦隊の姿が

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Writer: 稲葉義泰(軍事ライター)

軍事ライター。現代兵器動向のほか、軍事・安全保障に関連する国内法・国際法研究も行う。修士号(国際法)を取得し、現在は博士課程に在籍中。小学生の頃は「鉄道好き」、特に「ブルートレイン好き」であったが、その後兵器の魅力にひかれて現在にいたる。著書に『ここまでできる自衛隊 国際法・憲法・自衛隊法ではこうなっている』(秀和システム)など。

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コメント

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1件のコメント

  1. 自衛隊(軍隊)は第一に外敵に備えて常に精神、肉体を健全に保つ事が大事であるコロナのような感染症にはあまりに対処しないが良い民間でできることは民間で行う軍隊の存在は自身の肉体を犠牲に国家国民を守りぬく崇高な組織である