進化する列車のトイレ 課題は水 150年でどう変わった? 常には使えなかった時代も

節水に寄与した「循環式」 改良され主流は「真空式」に

 タンク式は新幹線で、粉砕式は在来線で実用化されたものの、どちらもあらかじめ洗浄水をたっぷり用意する必要がありました。長距離列車のトイレの使用に耐えられる水の量は膨大です。限られた空間の中で大容量の洗浄水タンクを設置する場所は悩みのタネでした。以降は新幹線、在来線ともに「循環式」が主流になっていきます。

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西武鉄道の特急車両「Laview(ラビュー)」のトイレ(2019年2月、杉山淳一撮影)。

 循環式は、あらかじめ洗浄水に脱臭剤や消毒液を混ぜておき、トイレ使用後はフィルターで洗浄水と汚物を分離し、洗浄水を再利用するというものです。その結果、汚物タンクと洗浄水タンクを兼ねられます。汚物タンクに7割程度の洗浄水をセットしておくと、2日から3日で満タンになる計算です。欠点としては機構が複雑で、汚物の抜き取りに専用の地上設備が必要になることです。

 これを受け、固形の汚物だけを抜き取り焼却できる「カセット式」も開発されました。こちらは6日から10日程度で貯まった固体を取り出し、処理済みの液体のみ駅で排水します。この方式は地上設備を簡素化できるというメリットがあり、特急や急行列車よりトイレの使用頻度が低い、中距離近郊列車向けの設備として普及しました。

 現在は、循環式を発展させた「真空式」が主流です。便器に流す水を節約するために、排水管を真空にして汚物を吸引するしくみです。機構はさらに複雑になりますが、1度にトイレに流す水はわずか200ミリリットルほどになっています。

【了】

【写真】お召列車にも使われる「和」にはパウダーコーナーも

Writer: 杉山淳一(鉄道ライター)

乗り鉄。書き鉄。ゲーム鉄。某出版社でゲーム雑誌の広告営業職を経て独立。PCカタログ制作、PC関連雑誌デスクを経験したのち、ネットメディアなどで鉄道関係のニュース、コラムを執筆。国内の鉄道路線踏破率は93パーセント。著書に『ぼくは乗り鉄、おでかけ日和。日本全国列車旅、達人のとっておき33選』(幻冬舎刊)など。

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コメント

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1件のコメント

  1. 上野口を走る電車には
    東京~大宮間では使用しないでください
    のステッカーも貼られていたな…