戦車はどう右左折するの? その場でグルグル「超信地旋回」が技術の尺度になるワケ
「超信地旋回」はその国の戦車技術のバロメーター
超信地旋回は、左右の履帯を各々違う方向に回すため、トランスミッション(変速機)やステアリングシステム(操向装置)がそのぶん、複雑で高性能になります。
また履帯自体の強度も高くないと難しいため、実験はフランスなどで1920年代初頭から行われていましたが、実用化されたのは第2次世界大戦で登場したイギリスのチャーチル歩兵戦車やドイツのティーガー戦車などが端緒で、各国の戦車に普及したのは大戦後のことです。
日本戦車で初めて超信地旋回ができるようになったのは、陸上自衛隊の74式戦車です。74式戦車は、それ以外にもエンジンとトランスミッションの一体化、いわゆるパワーパック化や、トランスミッションのセミオートマチック化など、技術的にようやく世界の潮流に追いついたといえるものでした。
一方で、旧ソ連やロシア、中国の戦車などは、試作は別にして、超信地旋回の可能な量産戦車が登場したのは21世紀に入ってからです。
超信地旋回ができるか否か、それだけで戦車の性能を決めつけることはできませんが、それができるということは、少なくとも優れた基礎工業力のもとに作られた戦車だということは判断できます。
超信地旋回をデモンストレーションで披露する、もしくは逆に見せない(見せられない)というのは、実は理由があることなのです。
【了】
Writer: 柘植優介(乗りものライター)
子供のころから乗り物全般が好きで、車やバイクはもちろんのこと、鉄道や船、飛行機、はたまたロケットにいたるまですべてを愛す。とうぜんミリタリーも大好き。一時は自転車やランニングシューズにもはまっていた。
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