列車減便でコスト削減なるか 電気代 人件費…鉄道運行の仕組みから見るその悩ましい点

外出抑止の効果あり? 第2波、第3波への備え

 ほかにも電車を動かさないことで、電気代や燃料費を指す「動力費」は削減できますが、電力会社との固定料金がかかる場合は、限定的な減便ではほんの一部にすぎないのが現実です。ただし、収入の方で大幅な減少が続くため、少しでも経費削減に努めなければならないのも現実です。

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ホームの床下を通っている高圧配電ケーブルを点検する様子(2018年2月、恵 知仁撮影)。

 さて、鉄道の運行は運用計画のもとに成り立っていますが、乗務員も車両も、前の列車から次の列車への「つなぎ」を作る必要があります。

 たとえばある運転士がA駅からB駅まで乗務して、本来ならば次はB駅からC駅までが担当だったのに、減便により当該列車が運休になってしまえば乗務できず、さらに次のC駅からの乗務へつなぐことができません。

 このような乗務員および車両の運用組み合わせについても、減便においては改めて考え直さねばならないので、上手くつなげられなければ結果として乗務員が待機するだけになったり、車両も無駄な回送が発生したりと、効果的な減便にならないこともあります。単純に減便本数の比率でコスト削減ができるわけではありません。

 減便の話題が世に出はじめた2020年4月上旬、大阪メトロが減便を行いましたが、コスト削減というよりも利用者の外出を抑止する効果を狙ったものでした。結果として効果的だったようで、「計画運休」と同じようにあらかじめ運行計画を利用者に知らせるようなこともできます。今後、仮に新型コロナ感染拡大の第2波、第3波がやってきた際には、減便という手法を上手く使っていけるかどうかも注目です。

【了】

【写真】運行を支えるたくさんの人の手 鉄道のメンテナンス現場いろいろ

Writer: 西上いつき(鉄道アナリスト・IY Railroad Consulting代表)

大阪府出身。大学卒業後、名古屋鉄道にて運転士・指令員として鉄道運行に携わる。退職後、シンガポールの外資系企業にて国際ビジネスに従事。帰国後は東京を拠点として活動し2019年にIY Railroad Consulting設立、コンサルティング・セミナー・海外向け鉄道関連事業等を行う。東京交通短期大学・特別講師。著書に『電車を運転する技術』。

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