「不許可」覆した自衛隊初の災害派遣 現場からの直訴 国を動かす

陸上自衛隊の源流は、朝鮮戦争の勃発によって誕生した警察予備隊です。当時は再軍備への懸念から、警察予備隊の出動命令は内閣総理大臣しか出せませんでした。それが、初の災害派遣のときに足かせとなったのです。

指揮系統を飛び越えた直訴が奏功

 このとき福岡の第4管区総監部が出動不許可を下した理由としては、初の出行(出動)は軽々しく実施すべきではない、警察関係者が非常呼集されていないのに先んじて出行するのは問題である、また情報が不足しているといったこともあったようです。

 しかし、山口の第11連隊には時々刻々と死傷者多数、家屋倒壊、食糧や医薬品の不足といった様々な被災情報が伝わります。しかも警察予備隊が出動しない(できない)一方で、県西部の岩国飛行場に駐留するアメリカ軍が、ヘリコプターを用いて被災地に食料や医薬品、毛布の提供を始めました。

 そこで、しびれを切らした連隊長は、部下である副連隊長を直接、福岡の第4管区総監部へ派遣し、説明にあたらせることにします。副連隊長には被災地の写真26枚を持参させ、10月20日朝一番の急行列車で福岡に送り出しました。

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1960年5月に起きた「チリ地震津波」による災害派遣のため、三陸沿岸で活動する陸上自衛隊員(画像:陸上自衛隊)。

 第4管区総監部に着いた副連隊長は、ナンバー2の副総監に会おうとします。しかし副総監は出張中で、その後は官舎に直帰すると告げられ、副連隊長は官舎で副総監の帰りを待つことにしました。なんとか副総監と直接話し写真を見せることはできたものの、副総監は、「一度決定した命令は変更できない」と叱りつける始末で、決定が覆ることはありませんでした。

 そこで副連隊長は命令系統の逸脱を覚悟で、上級者である総監へ直訴するため総監部に戻り、帰宅直前の総監へ被災地の状況を報告。これを受け、総監は直ちに東京の警察予備隊総隊総監部(現在の陸上幕僚監部に相当)へ連絡を入れ、そこから吉田 茂首相(当時)に出行要請が届き、派遣が決定したのです。

 その結果、10月20日夕方、小月駐屯地から第11連隊を中心に隊員約300名が出動、26日までの約1週間、山口県玖珂郡広瀬町(現・岩国市)で救助活動を行ないました。

【写真】過去陸上自衛隊が活動してきた代表的な災害派遣

【ミリタリー】急げ、救え! 自衛隊「災害派遣」の現場にせまる!

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