内部はサウナ! イギリスの欠陥戦車「カヴェナンター」 それでも大量生産のワケ
小型化ローダウン化を追求したことが裏目に
「カヴェナンター」戦車は、コンパクトな車体に合うよう、動力も専用設計の水平対向12気筒ガソリンエンジンが用意されました。しかし、車体を小型化したせいでラジエーターなどの冷却系が機関室に収まりません。
そこでメーカーであるLMS(ロンドン・ミッドランド・スコットランド鉄道会社)は、ラジエーターなどの冷却系を車体前部の操縦席脇に設置したのです。
このエンジンとラジエーターの分割配置が、「カヴェナンター」を欠陥戦車にした根源となりました。エンジンとラジエーターが離れているため、両者をつなぐパイプが車内を縦断する形になります。これによりエンジンの冷却不足を引き起こしただけでなく、その排熱が乗員室にもまん延し、乗員を苦しめました。とくに真横にラジエーターがある操縦手席は劣悪な環境だったようです。
しかし、このような欠陥が判明しても「カヴェナンター」戦車は量産され、1771両も造られました。なぜ欠陥車と知りつつ大量生産されたのか、これには誕生した時期が大きく影響していました。
「カヴェナンター」戦車を開発中の1939(昭和14)年、ドイツのチェコスロバキア併合などで、ヨーロッパに戦争の気配が立ち上るようになりました。そのためイギリス政府は同年4月17日、試作車すら完成していないにもかかわらず、「カヴェナンター」の量産発注をLMSに対して行います。
それから5か月後の9月には、ドイツが隣国ポーランドに攻め入り第2次世界大戦が勃発、これによりイギリスは軍備の増強が不可欠となります。翌1940(昭和15)年に「カヴェナンター」の試作車が完成すると、同年5月にドイツがフランスに侵攻、ダンケルク撤退などで失った装備の補充も必須となり、1両でも多くの戦車が必要になったため、欠陥戦車でありながら「カヴェナンター」は生産され続けたのです。
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