内部はサウナ! イギリスの欠陥戦車「カヴェナンター」 それでも大量生産のワケ

欠陥戦車「カヴェナンター」が果たした意義とは

 しかし、イギリス陸軍は「カヴェナンター」戦車を第一線部隊に配備することはしませんでした。ほとんどの車体はイギリス本土で訓練用戦車として使われ、ごく一部が評価試験のために北アフリカに送られたものの、これらも現地テストに用いられただけで実戦には投入されずに終わりました。

 とはいえ、決して「カヴェナンター」戦車が役に立たなかったわけでもなかったようです。

 「カヴェナンター」の車体や砲塔の設計を流用して、ひと回り大きな「クルセイダー」戦車が並行して開発されましたが、流用によって同車は開発期間を短縮でき、試作車に関しては基になった「カヴェナンター」よりも早く完成したほどでした。

 短期間で完成した「クルセイダー」戦車は、第2次世界大戦前半のイギリスの戦車不足を救い、アメリカから大量のM4「シャーマン」戦車が供与されるまでしのいだ、「中継ぎ」役になったため、「クルセイダー」戦車の登板タイミングに「カヴェナンター」はある意味で貢献したといえるでしょう。

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「カヴェナンター」戦車に乗り込んだ当時のチャーチル英首相(画像:イギリス帝国戦争博物館/IWM)。

 またM4「シャーマン」戦車を含め、アメリカから大量に引き渡された各種の軽戦車や中戦車に乗り込んだイギリス戦車兵たちは、事前に「カヴェナンター」を使って操縦技術や戦術機動などを学ぶことができたため、イギリス陸軍は短期間で大量の機甲部隊を編成することができました。

 中継ぎの誕生に貢献し、第2次世界大戦後半のイギリス軍戦車部隊の礎を築いたという点で、「カヴェナンター」戦車は試行錯誤のなかにありながらも、存在意義は立派に確立したといえるのかもしれません。

【了】

【写真】「カヴェナンター」と似てても快適さは大違い「クルセイダー」

Writer: 柘植優介(乗りものライター)

子供のころから乗り物全般が好きで、車やバイクはもちろんのこと、鉄道や船、飛行機、はたまたロケットにいたるまですべてを愛す。とうぜんミリタリーも大好き。一時は自転車やランニングシューズにもはまっていた。

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