中国戦闘機「大躍進」までの艱難辛苦 安かろう悪かろうなイメージ 実際のところは?
もはやかつての印象を払拭した「中国製戦闘機」
以上のように、中国の戦闘機産業は何度も何度も危機に直面し、潰されもしました。その過程で生まれた戦闘機のほぼ全てが劣化コピーの粗悪品だったといえるでしょう。日本は中国とは反対に政治的に恵まれ、長い期間、戦闘機開発技術においてほぼ確実に優位でした。
しかし、それは「過去の話」です。中国はすでにF-16相当の飛行性能を持った完全オリジナルの戦闘機J-10の開発に成功しており、J-10B/Cでは高性能レーダーの搭載などによって高い戦闘能力を有していると推定され、2020年現在、数的主力を担いつつあります。またステルス戦闘機J-20は、実戦に耐えうる完成度があるのかは不明ですが、少なくともすでに量産体制に入っており、ステルス技術実証機X-2を1機生産しただけに留まる日本に先んじています。
中国は、ロシアやアメリカへ追いつこうとする強い意欲を持ち、そして莫大な開発費を投じています。中国の戦闘機開発技術はいままさに「大躍進」を遂げています。
大躍進後の中国がかつての中国ではない事実は、日本人ひとりひとりが直視しなければなりません。近々、本格的にプロジェクトが開始されると見られる航空自衛隊次期主力戦闘機開発では、総合力で中国には勝てない以上、何かを実現するためには何かを諦める必要があります。もし今後も多くの日本人が中国を侮り続けたならば、その取捨選択に失敗し、「粗悪品」を生み出してしまうことも十分に考えられます。
【了】
Writer: 関 賢太郎(航空軍事評論家)
1981年生まれ。航空軍事記者、写真家。航空専門誌などにて活躍中であると同時に世界の航空事情を取材し、自身のウェブサイト「MASDF」(http://www.masdf.com/)でその成果を発表している。著書に『JASDF F-2』など10冊以上。
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