退役撤回か スウェーデン軍「グリペンC/D」戦闘機 サーブが可否検討へ その切実な理由

スウェーデンが重武装化する地勢的な理由

 スウェーデンは、ナポレオン戦争が終結した19世紀初頭から冷戦が終結するまで、戦時、平時を問わず、国際関係の上で中立であることを基本とする中立主義を国是としていました。歴史的にも地理的にも同国にとって最大の脅威である、ロシア(ソ連)による侵略には断固、立ち向かうことも国是としており、このため冷戦終結までは国家の規模には不釣合いなほどの軍備を備えていました。このスウェーデンの中立主義は「重武装中立」と呼ばれています。

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電子的に自機の囮を作り出す能力を持つとも言われる電子戦装置「AREXIS」の外装型ポッド(画像:サーブ)。

 冷戦の終結とソ連の崩壊により、ロシアの脅威が低下して以降のスウェーデンは軍備を縮小し、2010(平成22)年には徴兵制も廃止しました。ところが、2014(平成26)年に起こったロシアによるウクライナ領への侵攻を契機に、ロシアの脅威に対する危機感を強め、2018(平成30)年には徴兵制を復活させています。

 スウェーデンのペーテル・フルトクビスト国防相は2020年10月15日に、ロシアがウクライナ、ジョージアへ侵攻したことなどによりヨーロッパの緊張は高まっているとして、2021年から2025年までの防衛予算を270億クローナ(約3375億円)増額すると発表しており、「グリペンC/D」の2035年までの運用期間延長検討も、その一環として行なわれるものと考えられます。

 Su-35やSu-57といった最新鋭機の配備が進められるロシアの航空戦力に対し、2000年代初頭に運用が開始された「グリペンC/D」で対抗するのは容易なことではありませんが、サーブは「2030年代にも『グリペンC/D』が敵にとって手ごわい戦闘機であり続けさせるための手段を、スウェーデン政府に提供できます」とのコメントを発表しています。

【画像】2021年初頭時点での現行版「グリペンC」のコックピット

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コメント

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1件のコメント

  1. レーダーや電子戦装置をサーブが開発? レイセオンかどっかが開発して、サーブが機体に搭載するのではないのかな?