快速より普通が混むことも 東京メトロ東西線はなぜ有数の混雑路線になったのか

激しくなる混雑 解決に向けた取り組みは進行中

 バブル崩壊後は一転して利用者数は横ばいになりますが、2000年代後半になって都心回帰の流れが強まると、都内で高層マンションの建設が進み、江東区内の木場、東陽町、南砂町や、江戸川区内の葛西、西葛西の乗降客数が再び増加に転じます。

 2000(平成12)年から2018年にかけて、木場駅は5.4万人から7.8万人、東陽町駅は10.9万人から12.5万人、南砂町駅は3.5万人から6.2万人、西葛西駅は9.5万人から10.6万人、葛西駅は8.8万人から10.8万人へと高い伸びを見せました。1998(平成10)年までは営団地下鉄8路線のうち最も混雑する路線は千代田線でしたが、1999(平成11)年以降は東西線が混雑率ワースト1に躍り出ます。

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東西線(西船橋→中野方向)の最大混雑率。利用者の増加や列車の増発、新駅開業などで激しく変動したが、1990年度以降は大きな変化がない(草町義和作成)。

 特に快速通過駅の利用者数が一段と増加したことから、東西線は快速よりも普通が混雑するようになり、混雑率を平準化するため、2007(平成19)年から朝ラッシュの最混雑時間帯の中野方面行き快速が、浦安から各駅に停車する通勤快速に変更されています。

 現在、東西線の中野方面行き列車は朝ラッシュ時間帯、ピーク1時間あたり27本が運転されており、複線の鉄道としては輸送力の限界に達していますが、更なる増発を可能とするため、東京メトロは飯田橋~九段下駅間での折返し線新設工事と南砂町駅の大規模改良工事を進めています。そこに降って湧いたのが新型コロナウイルスの感染拡大でした。

 コロナ禍による輸送人員の減少がいつ頃、元に戻るのか、あるいは元に戻らないかは分かりませんが、東西線の混雑緩和に向けた取り組みは、2027年頃の完成に向けて、今も着々と進んでいます。

【了】

【写真】東西線直通用 国鉄初のオールアルミ車体「301系」

Writer: 枝久保達也(鉄道ライター・都市交通史研究家)

1982年、埼玉県生まれ。東京地下鉄(東京メトロ)で広報、マーケティング・リサーチ業務などを担当し、2017年に退職。鉄道ジャーナリストとして執筆活動とメディア対応を行う傍ら、都市交通史研究家として首都圏を中心とした鉄道史を研究する。著書『戦時下の地下鉄 新橋駅幻のホームと帝都高速度交通営団』(2021年 青弓社)で第47回交通図書賞歴史部門受賞。Twitter:@semakixxx

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コメント

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2件のコメント

  1. 西船橋からの運賃(特に定期)をあげたらどうですか。総武線もかなり混んでいる方だけど。

  2. 昔は7両編成と10両編成混在の時期がありました。10両編成が発射したあと、7両変成の列車が到着すると、10両分で待ち構えていた乗客が7両分に圧縮されて乗り込むので特に先頭車や最後尾は大変な混雑でした。
    それと、葛西-西船橋の地上区間では陽当たりがよく、冷房のない車両では大変酷でした。その際、握り棒などが、火傷しそうなくらい熱くなっており混雑で押しつけられると大変苦痛でした。いまは随分ましになりましたが。