「東北で戦が起きた」元陸自トップ3.11の対応を語る いかにして7万の隊員を動かしたか

東日本大震災から10年。あのとき被災地には、北海道から沖縄まで、文字どおり全国から自衛隊員が救援のために駆け付けました。迅速に部隊が集結し、活動を開始できたのはなぜか、当時の陸自トップに話を聞きました。

“前線司令部”は文字どおり雑魚寝

――初の統合任務部隊を編成し運用するにあたり、大変だったことなどを教えてください。

 統合任務部隊、すなわち「JTF-TH」の司令部は仙台駐屯地に設けられたわけですが、前述のとおり、東北方面総監部だけでは幕僚が足りないわけです。

 自衛隊は平素、余力があるわけではないので、やむをえず、学校の研究員などを派遣しましたが、今度は司令部となった総監部もスペースに余裕があるわけではなかったため、部屋の確保から机や椅子の用意まで難儀しました。当初は、増強幕僚として派遣された要員などは廊下で寝起きしていたような状況でした。

 最初に現地を視察に行った際には、そのような状況で頑張る彼らを見て、涙が出る思いだったのを覚えています。雑魚寝状態のようななか、長期にわたり任務を継続するのは訓練されているとはいえ、精神的にも肉体的にも負担が大きいといえるでしょう。

 日米共同訓練などでは、アメリカ軍は必ず「当面作戦」と「将来作戦」を分け、ローテーションを組みながら継続して対応にあたります。悲しいかな、まだ自衛隊はそこまでの余裕はないので、幕僚組織も限られた人員でできるだけ頑張るしかないというのが現状です。それに関しては、キチンとした「バトルリズム」を確立できる幕僚組織を作っていく必要があると思います。人員が非常に限られているものの、その点は教訓といえるでしょう。

※ ※ ※

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宮城県石巻市の避難所で生活支援にあたっていた第20普通科連隊(山形県東根市)の隊員と地元の子どもたち(柘植優介撮影)。

 火箱元陸上幕僚長は、東日本大震災での災害派遣活動について、次のように語っていました。

「震災に対して、陸上自衛官のなかに平気で任務を遂行できた人間などおらず、隊員のほとんどは必死に自己犠牲的過活動を行い、国民のため、国家のために働いたのではないかと認識しています。私自身、原発対処についても自分たちがやらずして誰がやる、被災地支援などについても、できることは何でもやるとの思いで部下を指導しました。自衛隊も苦闘しながら必死に国民に寄り添ったというのが実情でした」

 被災地の自衛官は、本人や家族、親類、知人などが被災するなか、自らの責務を全うすべく活動をつづけました。

 東日本大震災のあとも、熊本地震を始めとして台風や豪雨、雪害などでたびたび自衛隊は派遣されています。有事だけでなく大規模災害時も最後に頼りになるのは自衛隊です。将来、起こり得る大規模災害の際に、1人でも多くの被災者が助かるために、東日本大震災を始めとした過去の教訓が生きることを望んでやみません。

【了】

※一部修正しました(3月11日10時19分)。

【写真】被災地で奮闘した陸海空自衛隊

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