ワクチン接種進めば需要回復? 高速バス、見えてきたトンネル出口 会社により明暗も

厳しい現実も待っている

 一方で、厳しい現実も、一部には覚悟しないといけません。

 高速バス事業者のほとんどは、地域の路線バス事業を本業としており、小売業など付帯事業を幅広く展開しているので、決して楽な状況ではありませんが、経営の基礎体力はあります。しかし、貸切バス専業、または貸切バスと高速バス事業のみの事業者、とりわけ2000年の規制緩和以降に参入した「新免」事業者の中には、国などの支援策でなんとか生き延びている者も多くいます。雇用調整助成金や緊急融資制度といった国の支援策、また銀行やリース会社による返済猶予が終了すれば、即座に経営が行き詰まる会社が出てくるかもしれません。

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地方から東京など大都市へ向かう高速バス需要は、コロナ禍で大きく減退した(高速バスマーケティング研究所作成)。

 また、冒頭に述べたワクチン普及後の需要回復シナリオが順調に進む保証はありません。重大な副反応が起こるなどすれば、接種率が上がらない可能性があります。また、接種率が十分に上がる以前に感染が再拡大し、それによってウイルスが多様な変異を起こせば、ワクチンの効果が下がるリスクがあるとも報道されています。

 多くの人が旅行や会食を気兼ねなく楽しみ、業界が以前のようにビジネスをできる環境を早く取り戻すためには、国民一人一人が感染防止を徹底することが、もっとも早道だと筆者は考えています。

【了】

【画像】ガラッと変わった「目的地検索ランキング」

Writer: 成定竜一(高速バスマーケティング研究所代表)

1972年兵庫県生まれ。早大商卒。楽天バスサービス取締役などを経て2011年、高速バスマーケティング研究所設立。全国のバス会社にコンサルティングを実施。国土交通省「バス事業のあり方検討会」委員など歴任。新聞、テレビなどでコメント多数。

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コメント

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1件のコメント

  1. しごとの関係で週一回「みと号」に片道だけ乗ります。東京駅ターミナルで驚いたのがみと号の削減率の高さ。

    かしま号はともかく東名便に抜かれました。

    かしま号恐るべし。

    特急あやめを消滅させたから、の需要とも言えますが、間10分が日中もあるんです。