ドイツ技術+イタリアデザイン=最強!? エンジン換装で生まれ変わったWW2イタリア機3選

新エンジンで健脚を手に入れた「射手」

 さらに、ドイツ製DB605型エンジンに換装したイタリア製戦闘機が、レッジアーネRe.2005「サッジタリオ(射手座)」でした。原型はRe.2002で、翼形状などはほぼそのまま受け継がれますが、横長の液冷エンジンを積むために機首が細長くなったことで、全体にスマートで流麗な印象に生まれ変わりました。1942(昭和17)年9月に試作2号機が初飛行を行い、最高速度628km/hの高性能を出しています。

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1943年6月、ローマ近郊のリットリオ基地に駐留した第42戦闘航空団第22航空群第362飛行隊のRe.2005。胴体の識別用白帯の上には案山子の部隊マークが描かれている(吉川和篤作画)。

 ただ、マッキMC.205Vや、フィアットG.55の方が生産性に優れるとされ、レッジアーネ社の新型機は後回しにされました。それでも戦況の悪化に伴い新型機の導入が望まれたことでRe.2005として制式化されたのです。しかしDB605型エンジンのライセンス生産が遅れたため、1943(昭和18)年9月のイタリア休戦までに完成した機体は32機だけでした。

 とはいえ、Re.2005は少数ながらも、持ち前の高性能を発揮して、休戦直前の1943(昭和18)年4月から6月のわずか2か月のあいだにアメリカのB-24大型爆撃機を7機も撃墜しています。7月のシチリア島防衛戦ではイギリスの高性能戦闘機「スピットファイア」2機を含む敵機5機の撃墜戦果を挙げており、ほかにも多数の撃墜を記録して迎撃機としての優秀性を示しました。

 マッキMC.205、フィアットG.55、レッジアーネRe.2005は、型式の末尾から3機種まとめて「セリエ5」(5シリーズ)とも呼ばれています。3機種とも遅過ぎたデビューと、少ない生産数(配備数)から実戦ではその真価を充分に発揮できずに終わりましたが、イタリア生まれの機体性能を、ドイツ製エンジンで極限まで引き上げた好例といえるでしょう。

 まさしく、この「セリエ5」は、戦争が生んだ「マリアージュ」、イタリア語ならば「マリアッジョ」と言えるのかもしれません。

【了】

【カッコイイ!】映画のごとくポーズを決めたイタリア人戦闘機乗り

Writer: 吉川和篤(軍事ライター/イラストレーター)

1964年、香川県生まれ。イタリアやドイツ、日本の兵器や戦史研究を行い、軍事雑誌や模型雑誌で連載を行う。イラストも描き、自著の表紙や挿絵も製作。著書に「あなたの知らないイタリア軍」「日本の英国戦車写真集」など。

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1件のコメント

  1. もし休戦していなかったらどうなっていたんだろう…