夜行バス“逆襲”へ? 縮小のなか新参入も増加のワケ【高速バス新潮流・長距離路線】

それでも新規参入が続々のワケ

 前者の地方マーケットでは、弘南バスをはじめとする路線バス事業者は「地元の名士」です。そのため地元での浸透は早く、「ブルートレインの代替」として定着しました。「東京、大阪で朝イチに商談」「会食やコンサートに夜まで参加」といった場合、夜行移動が便利だったからです。しかし近年、相次ぐ新幹線延伸で日帰りが可能になり、「忙しいから、時間節約のため夜行バス」という出張客は新幹線に移った地域が目立ちます。

 大都市間中心だった高速ツアーバス各社も、制度改正を受け、法令上、既存の高速バスと一本化されるとともに地方路線へ進出しています。大阪~福岡では、伝統ある「ムーンライト号」の撤退後、代わりにこれら新興事業者らが続々と参入して市場をむしろ拡大させており、事業者の腕が試されているとも言えます。

 後者の大都市間マーケットでは、激しい競争のなか、事業者が二分されつつあります。「ドリーム号」や「ウィラーエクスプレス」、平成エンタープライズ「VIPライナー」などが、ポイントプログラムを充実させるなどして「指名買い」のリピーターを増やすブランド化戦略に成功しつつある一方、中小事業者の多くは価格訴求に頼っています。

 このように楽な経営と言えない長距離路線ですが、予約サイトからの送客を期待できるため、後発での参入は比較的容易です。特に、国内客も訪日客も団体旅行から個人旅行へシフトし市場縮小が進む貸切バス事業者から見ると、希望のマーケットに映ります。将来に危機感を強めた中小の貸切専業の事業者が、一縷の望みをかけ首都圏~京阪神などに参入する例が見られます。

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ウィラーエクスプレスの例。同様のデザインで、帝産観光バスと祐徳自動車が参入する(中島洋平撮影)。

 それら中小事業者と一線を画し注目されるのが、2021年12月の帝産観光バスと祐徳自動車の参入です。前者は、東名阪に拠点を構え、創業70年を超える貸切専業の老舗。後者は、戦前からの歴史を持つ佐賀県の路線バス事業者ですが、貸切バス事業を大きく展開する一方、高速バスは運行していませんでした。いずれも、ウィラーエクスプレス仕様の車両とブランドで運行するものの、許認可のうえでは紛れもない自社路線です。

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コメント

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1件のコメント

  1. この記事について質問があります。
    「(祐徳自動車は)戦前からの歴史を持つ佐賀県の路線バス事業者ですが、貸切バス事業を大きく展開する一方、高速バスは運行していませんでした」
    と説明されています。
    しかしながら、過去に自社運行の高速バスを博多バスターミナルから嬉野温泉経由鹿島バスセンター・祐徳稲荷まで1日2往復運行していました。また、九州急行バスに出資しており、高速バスの運行に縁がなかったわけではありません。
    このあたりをリサーチしてから記事にして欲しかったです。