戦車の弱点トップを狙うには? 試行錯誤の末 幻の戦車駆逐車が示したごく単純な解答
戦車が登場して100年あまり、研究され尽くした攻略方法のなかでも有効なもののひとつが弱点である上方への攻撃です。これを実現しようとする試行錯誤のなかに、文字通り「シンプルに考えたらそうなるよね」という車両が存在しました。
「上」を狙うなら上から撃てばいいじゃない
戦車の特徴はとにかく「硬い」ことです。現代戦車の装甲は厚い鋼鈑というだけでなく、複数の素材を組み合わせた複合装甲や、自ら爆発してダメージを相殺しようという反応装甲なども使われています。
とは言うものの、戦車全体が厚い装甲で覆われているわけではありません。装甲を厚くすれば重くなるばかりで、戦車の機動性は削がれます。そこで少しでも軽量化するために、弾に当たりやすい前面が一番厚く、弾が当たり難い底面や背面、上部は比較的、薄くなっているのが普通です。正面装甲を打ち破るのは難しいですので、弱点となる装甲の薄い部分を攻撃しようというシーソーゲームはずっと続いています。
弱点のひとつである上部を狙おうというのが、いわゆる「トップアタック」です。第2次世界大戦期には、大口径機関砲を装備したドイツのJu-87G「スツーカ」などの対戦車攻撃機が実戦投入されます。戦後に攻撃ヘリコプターが登場し、最近(2022年現在)では自爆ドローンも空から戦車を襲います。動画サイトに投稿されたドローン映像を見ると、空から狙われる戦車の脆弱さが良く分かります。
1979(昭和54)年に放映されたSFアニメの『機動戦士ガンダム』に「マゼラアタック」という戦車が登場します。砲塔だけ車体から分離して垂直上昇飛行し、高所から射撃できるという設定でした。SFアニメらしい突飛な設定で、攻撃ヘリコプターと戦車のハイブリットといえるかもしれません。
砲塔だけ上昇飛行させるという「マゼラアタック」は架空の戦車ですが、似たようなアイデアが実際にありました。森林や建物の背後に隠れ、高所作業車のように伸縮タワー式で砲塔だけ持ち上げて、高所から敵戦車を攻撃しようという発想でした。いま見ると異形のいわゆるトンデモ兵器のようですが、西ドイツ(当時)が1980年代に「パンター戦車駆逐車計画」として真面目に研究していました。
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