戦車の弱点トップを狙うには? 試行錯誤の末 幻の戦車駆逐車が示したごく単純な解答

戦車が登場して100年あまり、研究され尽くした攻略方法のなかでも有効なもののひとつが弱点である上方への攻撃です。これを実現しようとする試行錯誤のなかに、文字通り「シンプルに考えたらそうなるよね」という車両が存在しました。

「パンター戦車駆逐車」計画キャンセルの背景 時代が先に行き過ぎた

 20世紀の終わりまで異形ともいえる「パンター戦車駆逐車計画」が進められていたのは興味深いことですが、そうこうしているあいだに、こんな無理をしなくても携帯対戦車ミサイル自体が上昇して戦車上面を狙うトップアタックモードが実用化されました。1985(昭和60)年から生産されたスウェーデンのボフォース RBS 56 BILL対戦車ミサイルが最初とされます。このミサイルは照準器で狙った照準線の約0.75m上を飛翔し、目標上部で降下して命中します。

Large 20220115 01
発射された瞬間の「ジャベリン」対戦車ミサイル。ミサイル弾体1発1万7500ドル(約183万円)也(画像:アメリカ陸軍)。

 アメリカの「ジャベリン」対戦車ミサイルは発射後、高度約150mまで上昇して飛翔し、急降下して目標上部に命中します。日本の陸上自衛隊も同じ機能を持った、01式軽対戦車誘導弾を装備しています。

Large 20220115 02
「ジャベリン」対戦車ミサイルのトップアタックモード飛翔イメージ。射距離1200m以上で高度150mから160mまで上昇するのが分かる(画像:アメリカ陸軍)。

 21世紀にはドローンという強敵が出現します。対戦車ミサイルのように敵を発見してから発射されるのではなく、継続的に自律飛行して目標を探し、探知するとオペレーターの指示で目標に突っ込みます。「徘徊型爆弾」とか「カミカゼドローン」などと呼ばれる厄介な敵です。上空に滞空して発射点もわからず、命中するまで狙われていたこと自体に気が付かないこともあります。命中時の映像が動画投稿サイトでも広く拡散され、戦車のやられ役イメージを補完しているようですが、実際にはドローンも妨害に脆弱で、対ドローン兵器の進歩や、使用できる気象条件も制限されるなどイメージするほど万能ではありません。

Large 20220115 03
イスラエルIAI社「ハーピー」徘徊型爆弾。航続時間は9時間とされる(画像:Jastrow、Public domain、via Wikimedia Commons)。

 戦車もトップアタック対策として、上部に装甲を追加して対抗しています。最近ロシアでは、日除けルーフのような追加装甲を装備したT-72戦車が出現しました。現場部隊では「サンバイザー」と呼ばれ、乗員には居住性向上という意味では好評だといいますが、公式には何もコメントしていません。

 しかし骨組みの日傘の様な防護柵までゴテゴテくっつけた戦車は、いかにも慌てて対策した感が否めません。姿形も磨き上げられた性能の一つだと思います。こんな姿を見ると、やはり戦車は時代遅れになったのかなとも思えてしまいます。

【了】

【画像】居住性は向上したらしいけど…ロシア戦車の「トップアタック対策」

Writer:

1975(昭和50)年に創刊した、50年以上の実績を誇る老舗軍事雑誌(http://www.argo-ec.com/)。戦車雑誌として各種戦闘車両の写真・情報ストックを所有し様々な報道機関への提供も行っている。また陸にこだわらず陸海空のあらゆるミリタリー系の資料提供、監修も行っており、玩具やTVアニメ、ゲームなど幅広い分野で実績あり。

最新記事

コメント

記事ランキング

  1. 航行中の護衛艦「かが」の周辺に「巨大な海洋生物」が出現! 艦艇勤務ならではの光景を海自公式が公開
  2. 「危なすぎる!」阪神高速“中の人”がブチギレ!? “衝撃動画”とともに呼びかける「ドライバーが守るべき3つのこと」とは
  3. 「知らなかった!」SNSで話題に 高速道路の“2つ並んだ赤い三角コーン”、実は超重要な「ある合図」だった! NEXCO公式が投稿
  4. ロシアのミサイル部品工場が「大炎上」 ウクライナ軍の航空機から発射した巡航ミサイルが「直撃」か
  5. 史上最大の軍艦より135mもデカい!? 旧海軍「大和」を凌ぐ『エースコンバット8』の新ボス「陸上戦艦」の衝撃スペックとは
  1. 家族が「SSSS航空券」を引き当ててしまった…! 乗る前から“異変” 保安検査員も「Oh…」 誰でも起こり得る“緊迫の一部始終”
  2. あと1年足らずで「現金でバス乗れなくなります」 全路線“完全キャッシュレス化”疑問に応えるサイト開設 京王バス
  3. ETCの手前で「ガシャン!」高速入口に吊るされた「黄色い鎖」の正体は? 傷つく覚悟で“あえてぶつける”超アナログな理由
  4. ロシア軍の爆撃機が「真っ逆さまに墜落」 地上に激突する瞬間を捉えた映像が公開 “巨大な黒煙”が立ち上る
  5. “まるで高速”な無料バイパス「全線4車線化」へ変貌開始! 一部の上下線分離まもなく 対面通行を解消 国道8号