戦車の弱点トップを狙うには? 試行錯誤の末 幻の戦車駆逐車が示したごく単純な解答
「パンター戦車駆逐車」計画キャンセルの背景 時代が先に行き過ぎた
20世紀の終わりまで異形ともいえる「パンター戦車駆逐車計画」が進められていたのは興味深いことですが、そうこうしているあいだに、こんな無理をしなくても携帯対戦車ミサイル自体が上昇して戦車上面を狙うトップアタックモードが実用化されました。1985(昭和60)年から生産されたスウェーデンのボフォース RBS 56 BILL対戦車ミサイルが最初とされます。このミサイルは照準器で狙った照準線の約0.75m上を飛翔し、目標上部で降下して命中します。
アメリカの「ジャベリン」対戦車ミサイルは発射後、高度約150mまで上昇して飛翔し、急降下して目標上部に命中します。日本の陸上自衛隊も同じ機能を持った、01式軽対戦車誘導弾を装備しています。
21世紀にはドローンという強敵が出現します。対戦車ミサイルのように敵を発見してから発射されるのではなく、継続的に自律飛行して目標を探し、探知するとオペレーターの指示で目標に突っ込みます。「徘徊型爆弾」とか「カミカゼドローン」などと呼ばれる厄介な敵です。上空に滞空して発射点もわからず、命中するまで狙われていたこと自体に気が付かないこともあります。命中時の映像が動画投稿サイトでも広く拡散され、戦車のやられ役イメージを補完しているようですが、実際にはドローンも妨害に脆弱で、対ドローン兵器の進歩や、使用できる気象条件も制限されるなどイメージするほど万能ではありません。
戦車もトップアタック対策として、上部に装甲を追加して対抗しています。最近ロシアでは、日除けルーフのような追加装甲を装備したT-72戦車が出現しました。現場部隊では「サンバイザー」と呼ばれ、乗員には居住性向上という意味では好評だといいますが、公式には何もコメントしていません。
しかし骨組みの日傘の様な防護柵までゴテゴテくっつけた戦車は、いかにも慌てて対策した感が否めません。姿形も磨き上げられた性能の一つだと思います。こんな姿を見ると、やはり戦車は時代遅れになったのかなとも思えてしまいます。
【了】
Writer: 月刊PANZER編集部
1975(昭和50)年に創刊した、40年以上の実績を誇る老舗軍事雑誌(http://www.argo-ec.com/)。戦車雑誌として各種戦闘車両の写真・情報ストックを所有し様々な報道機関への提供も行っている。また陸にこだわらず陸海空のあらゆるミリタリー系の資料提供、監修も行っており、玩具やTVアニメ、ゲームなど幅広い分野で実績あり。
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