「煙突と艦橋が邪魔」「飛行甲板増やせ」空母はいかにして完成されたか 無理ゲーに挑んだ各国
空母機動部隊から空母戦闘群へ
こうして空母はようやく実用にたえる兵器となりました。しかし、それでも残った空母の弱点は防御力でした。航空攻撃には脆弱だったのです。そこで空母を中心に戦艦、巡洋艦、駆逐艦で編成した空母機動部隊が誕生します。第2次世界大戦で空母機動部隊を運用したのは日本とアメリカの2か国だけでした。
当時のアメリカ太平洋艦隊は、タスク・フォース(任務部隊)に含まれるタスク・ユニット(任務群)に4つの空母機動部隊を組み込んでいました。この空母機動部隊は水上打撃部隊とも呼ばれ、当初は戦艦や巡洋艦などが空母を護衛していましたが、これらの艦艇がイージス艦やミサイル巡洋艦に変わったのが、今日の空母戦闘群(空母打撃群)になります。
第2次世界大戦後も各国は空母を運用し続けています。しかしその誕生のときから変わらず、空母はメンテナンスに手間がかかり、常に作戦行動するには複数の空母打撃群が必要となります。海上自衛隊が「いずも」「かが」の2隻体制を取り、中国が相次いで空母を建造するのもそのためです。それぞれの空母保有国は、空母特有のこうした困難を克服しながら、運用を続けているというわけです。
空母は航空機の進化ともに、アングルド・デッキやスキージャンプなどを取り入れてきました。今後も戦争のあり方によって姿を変えるかもしれません。
【了】
Writer: 時実雅信(軍事ライター、編集者、翻訳家)
軍事雑誌や書籍の編集。日本海軍、欧米海軍の艦艇や軍用機、戦史の記事を執筆するとともに、ニュートン・ミリタリーシリーズで、アメリカ空軍戦闘機。F-22ラプター、F-35ライトニングⅡの翻訳本がある。
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