ウクライナの「根こそぎ動員」兵士の数はMAXどこまで増やせるか 大戦中の日本は?
高い練度が必要ない個人携行型ミサイル発射機がベスト
現代戦はハイテク兵器が主役ですから、単なる頭数の比較は意味がないかもしれません。とはいえ、たとえばウクライナでの活躍が報じられる、歩兵ひとりで運用可能な携行型の対戦車ミサイル「ジャベリン」は、2週間で運用方法を習得でき、その命中率は95%にもなるとのこと。ゆえに「武器が行き渡って訓練できる」なら、この人口は一定の脅威になり得ます。
歩兵が個人で運用できるミサイルでも、飛行機やヘリコプターには一定の脅威ですし、戦車だけでなく、タンクローリーなどの補給車両も破壊できます。NATO(北大西洋条約機構)加盟国は参戦していませんが、ウクライナ軍に偵察情報を提供している模様であり、その点でもウクライナ歩兵が有利だといえるでしょう。襲撃しやすいエリアでロシア軍の補給線を狙うことが可能なため、実際、一部のロシア軍は補給困難に陥っているようです。
ロシアが属国と見なしているベラルーシに、参戦の圧力をかけたり、核兵器使用をちらつかせて恫喝したりするのは、軍の頭数が足りていない証拠だと、筆者には思えます。
ゼレンスキー大統領は「脱出用の航空機はいらないので、武器と弾薬が必要」と言っています。実際、数百万人が戦えるなら、頭数としてのNATO参戦は不要でしょう。ただ、これについては前提として「核兵器や生物化学兵器が使われないのであれば」という条件が付きます。
こうして改めてウクライナの「国民総動員令」を見てみると、西側諸国が歩兵用兵器を中心にウクライナへ武器供与しているのは、軍事的合理性としては的確だと言えるのではないでしょうか。
【了】
Writer: 安藤昌季(乗りものライター)
ゲーム雑誌でゲームデザインをした経験を活かして、鉄道会社のキャラクター企画に携わるうちに、乗りものや歴史、ミリタリーの記事も書くようになった乗りものライター。著書『日本全国2万3997.8キロ イラストルポ乗り歩き』など、イラスト多めで、一般人にもわかりやすい乗りもの本が持ち味。
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