世界最大の戦艦、実は俊足? 大和型戦艦の見方が変わるトリビア5選 武装もスゴイが弱点も
大和型が搭載していた電波&音響兵器
また大和型戦艦は、意外にも水中に潜む潜水艦を攻撃できる能力も備えていました。
大和型が備えていた対潜水艦装備
大和型戦艦には九五式爆雷10個が搭載されていました。「武蔵」は艦尾のジブクレーン付近に爆雷投下台を設置しており、潜水艦攻撃も一応、可能だったようです。ちなみに、太平洋戦争末期には「長門」など他戦艦も爆雷を装備していました。
また、艦載機による潜水艦攻撃も可能でした。「武蔵」の零式観測機は、1944(昭和19)年3月、パラオ沖でアメリカ潜水艦に攻撃を加えています。
ほかにも大和型戦艦は、敵潜水艦の魚雷攻撃に備える水中聴音機(ソナー)を搭載していました。零式水中聴音機は、艦首水線下のバルバス・バウに装備され、3~4万m先の主砲弾弾着音を捉える性能を有していました。
しかし、水中聴音室が第一主砲塔に近くのため、主砲が旋回すると、騒音で使用できないなど、実装状態に問題があったそうです。
日本初のレーダー射撃を行った「武蔵」
大和型の2番艦「武蔵」は1942(昭和17)年10月、二式二号電波探信儀(レーダー)一型を水上射撃用に改造し、射撃演習を行った記録があります。この演習で、「武蔵」のレーダーは標的艦を務めた戦艦「扶桑」を距離44kmで探知し、もう少し近付いたのち、ほぼ主砲最大射程となる4万1500m(41.5km)からレーダー射撃を試みています。しかし、主砲発射の爆風でレーダーが破壊され、上手くいきませんでした。
その後、大和型は1944(昭和19)年に、レーダー射撃可能な「二号二型改四スーパーへテロダイン式受信機付」を装備。この新型レーダーは測距精度100m、測角精度0.5度という性能でした。
大和型戦艦に搭載された15.5m光学測距儀は、大遠距離での平均測距誤差が300m程度であったため、数値の上ではレーダーの方が観測精度に優れていたことになります。
射撃の補助兵器としては、探照灯も大和型では特徴的でした。大和型の探照灯は口径150cmという巨大なモノで、世界最大でした。これを左右4基ずつ計8基備えていましたが、重巡洋艦の110cm探照灯は「1万m先で、本が読める」ほどの明るさと伝えられています。陸上用の150cm探照灯は1万2000m程度まで有効という資料もあり、世界一の艦載用探照灯でした。大和型用の150cm探照灯は、軍港などにも設置され、防空用にも重用されたといわれています。
ちなみに、アメリカ戦艦は36インチ(91.4cm)探照灯を装備しています。アイオワ級で4基装備ですから、150cm8基(改装後6基)装備の大和型は、探照灯では大きく勝っていたと言えます。
なお、大和型戦艦がアメリカ戦艦と比べて劣っていたのは水中防御でした。1943(昭和18)年に「大和」がアメリカ潜水艦の雷撃を受けたさい、3000tの浸水が生じました。一方、アメリカ戦艦「ノースカロライナ」では、より大威力な旧日本海軍の酸素魚雷の直撃を受けたときは、970tほどと3分の1程度の浸水で済んでいます。
大和型がアメリカ並みの液層防御仕様の水中防御力を備えていたなら、より多くの魚雷に耐えられたことは間違いなく、建造時に「液層より空層が有利」とした判断が惜しまれます。
【了】
Writer: 安藤昌季(乗りものライター)
ゲーム雑誌でゲームデザインをした経験を活かして、鉄道会社のキャラクター企画に携わるうちに、乗りものや歴史、ミリタリーの記事も書くようになった乗りものライター。著書『日本全国2万3997.8キロ イラストルポ乗り歩き』など、イラスト多めで、一般人にもわかりやすい乗りもの本が持ち味。
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