唯一立ち入れた御料車がある!? マロネフ59形 皇族以外も乗せた数奇な歴史
頻繁に形式が変わる!
しかし、敗戦後に進駐したアメリカ軍に接収され、1949(昭和24)年に車軸駆動冷房装置を搭載したスイロネ37形に再度変更されました。1951(昭和26)年ごろに晴れて接収を解除されると、スイロネ37形「1」は14号御料車に、「2」はマイロネ39形に、先述した、後に京都鉄道博物館で保存される「3」はスイロネ37形に戻した上で皇太子用非公式御乗車用車両に、それぞれ改造されました。
この皇太子用非公式御乗車用車両はさらに変わります。1952(昭和27)年にブレーキ装置を操作できる緩急車設備を復活させ、重量増加も反映してマイロネフ38形1となりますが、1955(昭和30)年に1等寝台車が廃止されたことで、マロネフ59形1に改番されます。1961(昭和36)年の廃車後は、大阪・弁天町の交通科学博物館で、翌1962(昭和37)年から2014(平成26)年の閉館まで保存されていました。
そして2016(平成28)年に京都鉄道博物館へ移設され、現在に至ります。筆者(安藤昌季:乗りものライター)は特別公開時に車内を見学しましたが、極めて贅沢で精緻に作りこまれた車両として、強い印象を受けました。
なお14号御料車となった「1」ですが、シャワー室も備え、皇太子用として使われた後、国賓用となりました。イラン皇帝やペルー大統領、フィリピン大統領などを乗せた後で引退し、2022年現在は東京総合車両センターの御料車庫で保管されています。皇族専用車両が一般公開されたことはありませんが、筆者はいつの日か見てみたいと思うものです。
【了】
Writer: 安藤昌季(乗りものライター)
ゲーム雑誌でゲームデザインをした経験を活かして、鉄道会社のキャラクター企画に携わるうちに、乗りものや歴史、ミリタリーの記事も書くようになった乗りものライター。著書『日本全国2万3997.8キロ イラストルポ乗り歩き』など、イラスト多めで、一般人にもわかりやすい乗りもの本が持ち味。
明治村にある御料車は何度か車内公開しています。