日本最北の長距離路線バス「天北宗谷岬線」に乗った 171kmの鉄道代替バス 寂しき現状
ラストスパートの峠越えで音威子府へ
浜頓別を発車して25分ほどで、バスは中頓別バスターミナルに到着。こちらでも10分間停車しました。浜頓別高校前から乗車した高校生はこちらで下車し、車内は再び筆者と乗務員のみとなります。バスターミナル横には、錆で朽ちかけているキハ22系が。国鉄色への塗りなおしの話が出ており、援助金・アイデア・作業要員などを募集していますが、今後きれいな形でよみがえるのかどうか、気になるところです。
中頓別から国道275号天北峠を越え、1時間ほどで終点の音威子府村交通ターミナル(JR音威子府駅)に到着しました。稚内から4時間46分、素晴らしい車窓と複数回の休憩停車のおかげで、思っていたよりも長くは感じませんでしたが、乗客のあまりの少なさを見るに、この路線が置かれている状況の厳しさを改めて実感しました。
名物「音威子府そば」が食べられなくなる?
音威子府に着いたところで、近くの道の駅に立ち寄ってみます。お昼どきを過ぎていたことから、食堂は営業を終了していましたが、売店は営業しており、黒いそばで有名な「音威子府そば」を運良く購入することができました。
この音威子府そばですが、音威子府駅で営業していた「常盤軒」がご主人の逝去により2021年に閉店。村内の食堂「一路食堂」も、飲食の提供を2022年4月30日で終了しました。さらに、黒いそばを製造している製麺所(畠山製麺)が、社長の高齢化を理由に同年8月末をもって製造を終了、廃業する予定です。そばの製造方法も門外不出といわれており、今のところ後継についての話は聞かれません。
現在、音威子府そばが食べられるのは、「道の駅おといねっぷ」と天塩川温泉内のレストランの2か所のみ。お土産のそばを含め、音威子府そばを食べるのであれば本当に今のうちかもしれません。
天北線、懐かしいなあ。半世紀ほど前、初めて天北線に乗ったとき、駅間距離がすごく長かったことを思い出します。また、なの度目かの冬、浜頓別から公賓北線に乗り換えて、興浜北線からバス、興浜南線と乗り継いで中湧別、網走までオホーツク沿いに、冬の北海道を満喫したことや、浜頓別の商人宿のような旅館で出たカニがすこぶるおいしかったことなど、この記事のおかげで思い出しています。