日本最北の長距離路線バス「天北宗谷岬線」に乗った 171kmの鉄道代替バス 寂しき現状
ずっと厳しかった「天北宗谷岬線」のいま
現在の「天北宗谷岬線」は、かつてない厳しい状況に置かれています。
もともと廃止代替バスの運行に際して、最初の5年間は国が赤字分を負担するというスキームであったため、国からの赤字補填でしのいだのち、6年目以降に転換交付金の運用益で赤字を補う予定でした。しかし、低金利で運用益が十分得られず収支は悪化。加えて、鉄道時代に比べて利用者が大幅に減少したことから、補助期間後の1994(平成6)年から基金を取り崩して赤字を補填するという状況が続きました。
さらに、2010年代後半には大きな問題が明らかに。当時、「稚内~浜頓別」「稚内~鬼志別」「鬼志別~音威子府」の3系統は、地域間幹線系統として国や北海道から補助を受けていましたが、地方自治体が住民に配布するために購入した回数券についても輸送量への反映を認めていたため、沿線自治体は2000(平成12)年から回数券を購入し「買い支え」をしていました。しかし、実際には購入代金だけをバス会社へ支払い、回数券の発券を受けてこなかったという事実が発覚したのです。
2017(平成29)年、会計検査院はこれを問題視し、「回数券の発券すらされていないのは運輸実績として認められない」と指摘、改善を指示します。回数券購入分が輸送量から除かれることになった結果、輸送量が補助基準を満たさなくなり、2019年10月、上記3系統は国の国庫補助金対象路線と北海道の補助対象から外れることになったのです。これにより、さらなる運行経費削減の必要性が生じたことから、2018年10月と2020年10月の2度にわたりダイヤ改正を実施します。
中頓別町の広報誌「広報なかとんべつ」2022年3月号によると、現在は「稚内~鬼志別」4往復が「広域生活交通路線」として北海道から補助を受けて運行しているほか、「鬼志別~音威子府」2往復、「鬼志別~中頓別」1.5往復、「鬼志別~浜頓別」0.5往復が市町村単独補助路線として運行していますが、コロナ禍の影響もあり、状況はますます厳しくなるばかり。
そこで、沿線自治体で組織する協議会が2022年2月に臨時総会を開き、2023年10月から新しい運行体系へ移行することを確認しました。
天北線、懐かしいなあ。半世紀ほど前、初めて天北線に乗ったとき、駅間距離がすごく長かったことを思い出します。また、なの度目かの冬、浜頓別から公賓北線に乗り換えて、興浜北線からバス、興浜南線と乗り継いで中湧別、網走までオホーツク沿いに、冬の北海道を満喫したことや、浜頓別の商人宿のような旅館で出たカニがすこぶるおいしかったことなど、この記事のおかげで思い出しています。