山あいの旧海軍「地下ひみつ基地」 特攻の赤とんぼ練習機 忘却の“最高機密”を甦らせた!

太平洋戦争の開戦前から終戦まで、日本海軍の飛行訓練機であった複葉機の九三式中間練習機、通称「赤とんぼ」。この橙(だいだい)色の練習機の原寸模型の展示が、熊本県の山中にある“ひみつ基地”で始まっています。

忘れ去られた秘密基地のその後

 ところが、ここまで大規模に手が加えられたにもかかわらず、最後まで直接的な作戦基地としては使用されることはありませんでした。大きな理由としては、この球磨川流域でしばしば発生する濃霧が上げられます。結果として、戦史上では大きな記録も残されることなく、終戦と共にひっそりと閉鎖され、さらに“秘密基地”ゆえに戦後は世間から完全に忘れ去られた存在になったといいます。

 しかし、戦後70年が経過した2013(平成25)年になってから地元有志の方々による同基地や地下施設の調査が始まったことで、知られざる数多くの遺構が発見されました。そこで錦町は、この歴史を後世に伝える施設を開設することを決定します。

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「山の中の海軍の町 にしき ひみつ基地ミュージアム」のモダンな建物外観。中には海軍ゆかりの品々や「赤とんぼ」原寸模型と共に艦上攻撃機「流星」の実物風防も展示され、カフェや売店も充実している(吉川和篤撮影)。

 こうして生まれた資料館だからこそ、「山の中の海軍の町 にしき ひみつ基地ミュージアム」と名付けられたのです。同館は2018年8月に開設され、2021年3月にリニューアルオープンしましたが、このときに精巧に製作された九三式中間練習機の原寸模型の展示も始まりました。

 ほかにも当時の遺構である航空魚雷調整室など地下施設へのガイドツアーも行われており、この地を訪ねた人々に往時の秘密基地の一端を偲ばせてくれるとともに、戦争の激しさ、悲惨さを伝えてくれています。

 この地へ足を運び、精巧に造られた「赤とんぼ」の原寸模型を見て、地下施設を見学することで、当時へ思いを巡らせてみるのも良いのではないでしょうか。

【了】

【本物そっくり!】計器盤まで再現された「赤とんぼ」実物大模型のディテールほか

Writer:

1964年、香川県生まれ。イタリアやドイツ、日本の兵器や戦史研究を行い、軍事雑誌や模型雑誌で連載を行う。イラストも描き、自著の表紙や挿絵も製作。著書に「九七式中戦車写真集」や「イタリアの中戦車・重戦車写真集 」、「イタリア軍写真集」など。

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