新情報で振り返る韓国艦による火器管制レーダー照射事案 「自衛措置」は成立するか?
韓国の行為は「部隊自衛」として認められるのか?
このように、確かに国際法上は、行動中の艦艇に対する脅威が生じた際に、現場の艦長の判断に基づいてこれに対応することが可能と考えられます。しかし、それはあくまでも実際に攻撃を受けたか、あるいはその差し迫った脅威が存在する場合に限られるとも考えられます。
たとえば、この「部隊自衛」について規定するアメリカ海軍やオーストラリア海軍のマニュアルを見てみると、その行使が許されるのはあくまでも現実の攻撃やその急迫した脅威が生じた場合に限定されています。
これに照らして考えてみると、まず、2018年12月の事案に関しては、日本の防衛省が公開している映像からも分かる通り、当時の「P-1」の行動は韓国海軍の駆逐艦に対して一切脅威を与えるものではありませんでした。また、その後策定された指針に関しても、単に日本の哨戒機が警告を無視して接近してきたからといって、これに対して火器管制レーダーを照射することを「部隊自衛」として正当化することは難しいと考えられます。何より、これを友好国の軍用機に対して実施することは全く好ましいことではありません。
韓国側の対応が非協力的だったこともあり、ことの真相は未だ明らかではありませんが、しかし今後このようなことが二度と発生しないことを切に願います。
【了】
Writer: 稲葉義泰(軍事ライター)
軍事ライター。現代兵器動向のほか、軍事・安全保障に関連する国内法・国際法研究も行う。修士号(国際法)を取得し、現在は博士課程に在籍中。小学生の頃は「鉄道好き」、特に「ブルートレイン好き」であったが、その後兵器の魅力にひかれて現在にいたる。著書に『ここまでできる自衛隊 国際法・憲法・自衛隊法ではこうなっている』(秀和システム)など。
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