現代戦車なぜ「主力」ばかり? 軽中重に巡航等色々あった戦車の種類が収斂した理由

東西冷戦により主力戦車一本化はより強まる

 第1世代の主力戦車は、まだそれほど万能化が完全ではなく、機動力や火力を補うために軽戦車や重戦車と併用された時期もありますが、エンジンの高出力化や装甲の技術革新、砲弾や砲身の進化、戦訓の積み重ねにより、戦車の種類は火力、機動力、防御力をバランス良く持つ主力戦車へ集約されていくことになります。この点は現代戦闘機において、技術の発展や各国の台所事情により様々な任務をこなせるようなマルチロール機化が進んでいることに近いかもしれません。

 さらに冷戦期のソ連軍を基幹とするワルシャワ条約機構軍は、西側諸国に侵攻するプランとして、東西ドイツ国境全域に配備した1万両以上の戦車を主力とする部隊によって敵の戦線を破壊する「縦深攻撃」を用いることとなっていました。これを実行するためには、戦車が多目的な戦闘をこなせることに加え、補給や修理などの効率化のためにも、戦車装備の共通化と運用の平準化は必要不可欠でした。

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スウェーデンのStridsvagn.122戦車は、ドイツのレオパルト2A5戦車の改良型(画像:スウェーデン軍)。

 対するNATOなどの西側諸国でもこれは同じで、車体こそ自国の地形や思想により自動装填装置の有無や機動力と防御力どちらを重視するか、といった点で差異はあるものの、砲身に関しては、西側で共通の砲弾を使用するという観点から、第2世代主力戦車は「ロイヤル・オードナンスL7」、第3世代以降は「ラインメタル 120mm L44」などの砲身を採用、あるいはライセンス生産し搭載したり、同じ仕様のものを自国開発したりする国がほとんどになります。

 冷戦終了後は、複数の国での大規模な共同作戦の可能性が低くなったということで、国ごとの予算の関係で軽戦車に近いものが開発されたり、主力戦車の穴埋めとして装輪戦車が導入されたりしています。しかし、搭載エンジンがガスタービンかディーゼルかなどの違いはあっても、基本的に主力戦車と呼ばれる戦車が装甲部隊の主力であることは、さらに大きな技術革新でもない限りは変わらないと思われます。

【了】

【画像】中戦車といえば「チハ」! 占守島の九七式中戦車

Writer: 斎藤雅道(ライター/編集者)

ミリタリー、芸能、グルメ、自動車、歴史、映画、テレビ、健康ネタなどなど、女性向けコスメ以外は基本やるなんでも屋ライター。一応、得意分野はホビー、アニメ、ゲームなどのサブカルネタ。

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