米空軍公式の“ザ・魔改造” 異形のF-16戦闘機ファミリー 無事飛べた?

まるでスマホ! 音声認識やVRを実装したF-16

 F-16XLが初飛行した1982(昭和57)年7月、エドワーズ空軍基地にはもう1機のF-16を改造した実験機が到着しました。それがAFTI F-16です。AFTIとは先進戦闘機技術統合(Advanced Fighter Technology Integration)を意味しており、同機を用いて更なる戦闘能力の向上を図るべく、AMAS(Automated Maneuvering Attack System)と呼ばれる自動化機動攻撃システムの研究が行われました。

 AFTI F-16は、電子機器を格納するための背部のふくらみと、空気取り入れ口の下に増設された逆V字型のカナード(小翼)が外見上の特徴でした。使用兵器の選択をパイロットが音声で行ったり、照準をヘルメット内に投影されるイメージ映像で行ったりする実験を実施していました。これらは、今では日常的に使用されている音声認識とVRの先駆けといえるでしょう。

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1980年代前半アメリカ本土のエドワーズ空軍基地で撮影したAFTI F-16。外見上の特徴である背部のふくらみと、空気取り入れ口の下に増設された逆2枚のカナードが確認できる(細谷泰正撮影)。

 その後、AFTI F-16は第1段階の試験を終了した後、工場に送られカナードが外されてしまったため。外見上の特徴は失われてしまったものの、機体制御システム等のテストは、その後も続けられました。

 F-16は最初からフライバイワイヤによる飛行制御を前提として設計された機体であるため、機体固有の安定性を恣意的に低く設定しコンピューター制御との親和性を高めています。

 そういった先進性を有していたからこそ、F-16XLやAFTI F-16が生み出されたともいえ、ゆえに1980年代から飛躍的に進歩するデジタル技術を実装する機体としても、F-16は最適であったことを物語っています。

【了】

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Writer: 細谷泰正(航空評論家/元AOPA JAPAN理事)

航空評論家、各国の航空行政、航空機研究が専門。日本オーナーパイロット協会(AOPA-JAPAN)元理事

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コメント

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2件のコメント

  1. F-16XLを近代化・セミステルス化して、F-36を作るみたいだな。

  2. VRというよりARに分類されるね