「皇帝の戦車」徒花と散る おもちゃ以上にはなれなかった「ツァーリタンク」の顛末

後からなら何とでもいえる、とはいうものの、帝政ロシアで試作された「ツァーリタンク」と呼ばれる戦車は、冷静に考えれば設計段階でいろいろと気付けたのではないでしょうか。戦車黎明期に咲いた一輪の徒花のお話。

皇帝のポケットマネーでおもちゃから実物へ

 ニコライ2世は大の自動車好きで、メルセデス(ベンツ)、ドローネ・ベルヴィル、ルノー、プジョーなど超高級車を20台以上、コレクションしていました。世界最初のハーフトラックを作らせたのもニコライ2世です。

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後部から見た「ツァーリタンク」。小さな後輪に荷重がかかりすぎるなど設計上、欠点があった。

 ゼンマイ仕掛けのおもちゃは、皇帝の好奇心をくすぐるには充分でした。ニコライ2世は、私財から21万ルーブルをこの戦車開発に充てるよう命じます。ちなみに、当時のロシア帝国大臣の年収は1500ルーブル程度とされます。

 皇帝のお墨付きを得たレベデンコは、すぐさま実車を製作します。直径9mの巨大な2個の車輪と、直径1.5mの尾輪という三輪車形式で、T字型の箱型車体の左右最端部に機銃を装備した銃塔が1基ずつ設けられ、大砲を搭載することも考えられていました。さらに底部にも機銃塔を設置する予定だったようです。設計上の最高速度は17km/hでした。

 しかし、この巨体を動かすエンジンが問題でした。軽くて強力なエンジンがロシアには無かったのです。そこで優秀なドイツ製エンジンを調達することにし、そして1915年6月21日にインステルブルク(現在のカリーニングラードのチェルニャホフスク)付近へ墜落したドイツのツェッペリン飛行船LZ34号から回収した、210馬力のマイバッハエンジン2基を搭載することになります。肝心のエンジンを敵国の鹵獲エンジンに頼らなければならなかったこと自体、嫌な予感しかありません。

【画像】こちらはマトモそうに見えるのに…「ツァーリタンク」の元ネタ「アルバ」

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