『トップガン』で描かれたF-14戦闘機の“弱点”とは 映画じゃスリリング 現実は深刻 どう解決?
決定版F-14Dができてもコストに敗北
飛行試験と研究の結果、高迎え角時の機体制御に関する大きな成果を上げることができましたが、得られた成果が実機に反映されたのはそれから15年後に登場したF-14Dからでした。つまり、前作の『トップガン』が公開されていた時は、F-14「トムキャット」にとって、スピンの防止とスピンからの回復は、喫緊に改善すべき問題であったといえるでしょう。
なお、このD型はF-14シリーズの最終生産型となったモデルで、推力向上とコンプレッサーストール問題を解決した新型F110エンジンを搭載したのに加え、前述したNASAの研究成果を盛り込んだ飛行制御システムへの更新、さらに電子機器も一新されていました。
操縦席も液晶ディスプレイを多用した、いわゆる「グラスコックピット化」が図られており、非公式の愛称「スーパートムキャット」の名に相応しいアップデート内容でしたが、同時期に生産されていたF/A-18「ホーネット」戦闘攻撃機の方が、取得費用も整備・運用コストも安価で、かつ多用途性に優れていたことから、予算獲得の戦いで苦戦を強いられ、その結果、生産数は少数で終わっています。
筆者(細谷泰正:航空評論家/元AOPA JAPAN理事)は、『トップガン』公開前の1982(昭和57)年に、エドワーズ空軍基地でNASAがテストに使用していたF-14飛行試験機を見学する機会がありました。
当時、アメリカ海軍の次期戦闘機はVG翼に可変カナードを装備した機体になるのではと想像を膨らませたことを思い出します。それから40年、可変カナード付きの艦載機は現れませんでしたが、当時の写真を眺めて、飛行中にVG翼を動かしながらダイナミックなデモフライトを見せてくれたF-14「トムキャット」の勇壮を脳裏に再現しつつ、同機の往時をしのびたいと思います。
【了】
Writer: 細谷泰正(航空評論家/元AOPA JAPAN理事)
航空評論家、各国の航空行政、航空機研究が専門。日本オーナーパイロット協会(AOPA-JAPAN)元理事
トップガンはもちろんですが、ミッキー・サイモンの影響もあると思います。少なくとも自分はミッキー・サイモンの影響で、ファンになりましたよ。