速い・安い・高性能! でも売れず 米戦闘機F-20「タイガーシャーク」各国が見放したワケ

F-20が生まれた理由とノースロップの目論見

 やがて1970年代中頃になると、ノースロップはF-5E/F「タイガーII」をさらに発展させた新型の開発を検討するようになります。当時、中国(中華人民共和国)の脅威にさらされている台湾(中華民国)がライセンス生産していた同機の代替とするためでしたが、中国との外交関係に悪影響が出ることを恐れたアメリカ政府は、この計画を認めませんでした。

 しかし1980年になると、アメリカ政府は方針を変えます。最新鋭の機種こそ外国への販売は認めないものの、既存の機種の型式違いなら販売を認めるとしたのです。この政府方針に沿って、ノースロップはF-5E/Fの発展型として、新たに「F-5G」という型式を付与し、開発を進めるようになりました。

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F-20「タイガーシャーク」の原型となったF-5E「タイガーII」戦闘機(画像:アメリカ空軍)。

 こうして生まれたF-5Gは、限定的ながら水平尾翼にフライ・バイ・ワイヤを導入。性能のキモとなるエンジンについても、従来のF-5シリーズがJ85ターボジェットエンジンの双発(2基)という形だったのに対し、より大推力のF404ターボファンエンジン1基へと換装し、最高速度、実用上昇限度、上昇率、航続距離のいずれも性能向上を果たしています。

 加えて当時最新のアビオニクスを備え、その一環としてグレードアップしたレーダーとFCS(火器管制装置)を装備したので、従来のF-5シリーズでは運用できなかったレーダー誘導のAIM-7「スパロー」空対空ミサイルが使用でき、対地攻撃用の「マーヴェリック」ミサイルに加えて対艦用の「ハープーン」ミサイルまで運用できるマルチロール性を獲得していました。

 なお、同時期に開発が進められていたジェネラル・ダイナミクス社(現ロッキード・マーチン)製のF-16「ファイティング・ファルコン」戦闘機はレーダー誘導の「スパロー」空対空ミサイルを運用することができず、飛行性能でもF-5GはF-16にひけを取りませんでした。加えて、F-5Gは既存機F-5E/Fの技術を用いて開発された機体であったため、整備性にも優れており、かつ安価というメリットもあったのです。

 しかも、当初アメリカ政府は最新のF-16は輸出しないという方針であったことから、F-5GはそれまでのF-5E/F運用国の買い替え需要で市場開拓ができると考えられていました。

【コックピットやミサイル発射シーンも】F-20「タイガーシャーク」の様々なシーンほか

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コメント

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1件のコメント

  1. 軍需産業と政治の癒着の弊害を軍人上がりのアイゼンハワー大統領が警告を発してたが現実的には硬貨の裏表で切り離して事を進める事は不可能なんです!
    人類の知恵が生活の向上と言いながら反面確実に破滅の方向に向かっているのも同じ事!