冬の守護神「ラッセル車」社員減で車掌が兼務 電気代も圧迫 鉄路守る厳しさ弘南鉄道に聞く

かさむ電気代 とにかく厳しい冬

 さらに弘南鉄道の除雪車は電化路線ゆえ、電気と切っても切れない関係です。除雪列車は電気機関車で運行し、そのたびに電気使用量が増します。昨今は電気代の値上げが取り沙汰されていますが、鉄道の世界でも例外ではなく、冬季は空転、滑走、架線離線に対応するノッチアップ(力行)回数の増加、転轍機ヒーター、暗い早朝の外灯点灯と、電気使用量が増加するため、契約電力量をオーバーしないよう注意が必要です。

 また経産省の減免処置対応に関連して、使用電力量に対して売上が向上しないといけないため、利用収入増加が求められています。「キ100が動いている!」と沿線で喜ぶ背後には、電気代とのせめぎ合いがあるのです。かといって降雪は待ったなしなので、除雪列車は頻繁に運行しないとならず……。難しい状況ではあります。

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除雪作業が終わり、職員がED33 3のデッキを行き来する。運転台へは前部デッキより出入りする構造である。許可を得て撮影(2023年1月21日、吉永陽一撮影)。

 キ100形が運行されるのは弘南鉄道のみとなり、全国のファンが注目するでしょうが、マナーを守り、くれぐれも安全への配慮が欠けた行為は慎むべきです。除雪作業時の危険行為や沿線住民への迷惑行為はもちろん、雪で分からないからと田畑などへの侵入も厳禁です。また除雪列車撮影ツアーは有料であり、参加撮影者に対する妨害行為などもやめましょう。

 一般常識として当たり前のことですが、目の前の貴重な列車に目が眩んで周りが見えなくなるのではなく、むしろ厳しい冬に、沿線住民の足を確保するキ100形と電気機関車、運行に携わる職員の皆様へ敬意を表したいところですね。

【了】

【写真】94歳の古豪が豪快に雪を掻く!

Writer: 吉永陽一(写真作家)

1977年、東京都生まれ。大阪芸術大学写真学科卒業後、建築模型製作会社スタッフを経て空撮会社へ。フリーランスとして空撮のキャリアを積む。10数年前から長年の憧れであった鉄道空撮に取り組み、2011年の初個展「空鉄(そらてつ)」を皮切りに、個展や書籍などで数々の空撮鉄道写真を発表。「空鉄」で注目を集め、鉄道空撮はライフワークとしている。空撮はもとより旅や鉄道などの紀行取材も行い、陸空で活躍。

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