羽田の新バスターミナルに勝機はあるか 成田は乗り場移設 空港バスアクセス競争は新局面へ

羽田の新バスターミナル勝機ある?

 反攻に出た成田に対し、羽田も「エアポートガーデン」で競争力強化を狙います。旧国際線旅客ターミナル跡地の再開発で、民間デベロッパーが開発を担いました。バスターミナルを併設したのは、旅客ターミナルを発着する従来の空港連絡バス路線に加え、全国の都市や観光地を結ぶ高速バスも誘致しようという戦略だと考えられます。

 これらの取り組みは、今後、どう展開するでしょうか。

 まず羽田ですが、エアポートガーデン発着のバスの需要は、さほど大きくないと筆者(成定竜一:高速バスマーケティング研究所代表)は見ています。羽田発着のバスは、もともと、新宿などの都心部はもちろん、郊外の主要駅、さらに山梨、群馬、栃木、茨城など周辺県の中規模都市まで、稠密な路線網が完成しています。

 エアポートガーデン開業により新たに開業する路線は、より遠方ということになります。既存路線網にぽっかり空いた「穴」であった静岡県各地と、秋田県、青森県など北東北からの夜行路線は、一定の需要を見込めるでしょう。

 例えば北東北の人が、羽田を午前に出る国際線に搭乗する際や、「中国、四国や九州で昼に所用がある」という場合、前日の夜行高速バスで東京へ向かい羽田から朝のフライト、というような使い方は、以前から存在したからです。ただ、その需要のサイズでは、都心から羽田へ路線を伸ばすためのコストを回収するのが精一杯でしょう。

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羽田エアポートガーデンのバス時刻表。青森、酒田、白馬・栂池、金沢、新潟、長野といった行先が並ぶが、現時点で路線数や便数は多くない(成定竜一撮影)。

 では、インバウンドはどうでしょう。FIT(個人自由旅行)化が進み、一般論としては、空港連絡バスや高速バスの利用増加が期待されます。しかし、空港から観光地へ直行するバスの成功事例は、スキーやビーチなど滞在型リゾートへの路線にほぼ限られます。羽田の場合、「白馬のみ」と考えていいでしょう。箱根や日光など周遊型の観光地の場合、インバウンドは都心のホテルを拠点に動くケースが多いからです。羽田空港内にあるホテルの客室は合わせて2000室を超すといっても、それだけでは高速バスを毎日運行する市場規模に全く届きません。

 長野県など直通便がなかったエリアから羽田空港を利用する人の需要も考えられます。しかし少ない便数しか設定できないなら、30分間隔など頻発する高速バスでバスタ新宿に向かい、羽田行きのバスに乗り継ぐ方がよほど便利です。立派な施設が生まれることはバス業界として喜ばしいことですが、都心部で相次ぐバスターミナル計画と異なり、需要を少し読み違えていないか、危惧しています。

【便利…?】羽田の新バスターミナル/成田T3の新バス乗り場(地図と写真)

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