羽田の新バスターミナルに勝機はあるか 成田は乗り場移設 空港バスアクセス競争は新局面へ
羽田空港直結の複合施設「羽田エアポートガーデン」とともに新バスターミナルが開業。一方で成田空港はバス乗り場を移設します。両空港のバスアクセスは歴史的に違いがありますが、いま、それぞれの方向性で競争が激化しつつあります。
成田は“なし崩し的に路線網が失われる”懸念
一方、成田空港の課題は、路線網の整理と維持です。現在、成田発着の空港連絡バスは2種類に分かれます。一つは、東京空港交通や京成バスが各地のバス事業者と共同運行する従来からの路線で、都心まで3000円台を基準とした運賃設定です。もう一つが、2012年以降に生まれた、都心まで1000円台で結ぶ路線です。
成田~都心の距離で3000円超という前者の運賃は、都市間の高速バスと比べるとかなり高めです。逆に後者は、停留所を絞り込むなどして低単価を実現しています。
しかし、両者の区分は明確ではありません。本来、前者は、高級ホテルや郊外の主要駅まで乗り換えなしで結ぶ「プレミアムサービス」に位置付けられます。しかし、成田ではそれが普通であったため、プレミアム感をうまく打ち出せていません。このまま低運賃の路線が増えれば、高単価の路線の市場をなし崩し的に奪ってしまいます。
東京空港交通らが育て上げてきた稠密な路線網や、沿線で大きな販売力を持つ大手私鉄系事業者という重要なパートナーを棄損してしまう恐れがあるのです。両者を明確にブランド分けし、それぞれの強みを生かせる環境づくりが重要です。
東京の都心部では、高級ホテルを擁する大規模な再開発プロジェクトや、新たなバスターミナルの建設計画が相次いでおり、空港連絡バス乗り入れの要望は各地から届くと思われます。バス事業者や各空港会社には、潜在的な需要を正しく読んで路線を開設するとともに、ますます複雑になる路線網を利用者に上手に案内する環境づくりが求められています。
【了】
Writer: 成定竜一(高速バスマーケティング研究所代表)
1972年兵庫県生まれ。早大商卒。楽天バスサービス取締役などを経て2011年、高速バスマーケティング研究所設立。全国のバス会社にコンサルティングを実施。国土交通省「バス事業のあり方検討会」委員など歴任。新聞、テレビなどでコメント多数。
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