気球 VS 戦闘機 100年の戦い 「たかが風船」相手に人類はどれほど手を焼いてきたのか
気球は無人の大陸間横断兵器へ
第2次世界大戦でも気球 vs 戦闘機の戦いはありました。
日本は太平洋戦争末期に高空を吹く偏西風を利用した世界最初の大陸間横断兵器を実用化しました。「ふ号兵器」と呼ばれた風船爆弾です。アメリカ軍は対策に頭を痛めます。爆弾としては小型でしたが、生物兵器を搭載するかもしれないという懸念や心理的効果が大きかったのです。
何とか発見、捕捉しようと、墜落した「ふ号」のレーダー反射率を調べてレーダーを調整しましたがうまくいきません。太平洋沿岸に電波受信サイトを設けて「ふ号」が発する電波を捕えようとし、95の疑わしい信号を検出するものの、そもそも送信機を持つ「ふ号」は少なく迎撃には役立ちません。
結局「ふ号」の発見はほとんど目視に頼るしかなく、戦闘機がスクランブル発進しても捕捉できることは稀でした。それでも約20機を撃墜したとされます。終戦後、GHQは日本の航空機研究を禁止しますが、その中には気球も含まれていました。
米大陸で風船爆弾が発見された場所を示した分布図。今回の中国気球の飛翔コースと類似している(画像:Robert C. Mikesh、Public domain、via Wikimedia Commons)。
21世紀に入っても気球は戦闘機のライバルであり続けています。「バルーン・バスター」の称号は復活するのでしょうか。
【了】
Writer: 月刊PANZER編集部
1975(昭和50)年に創刊した、40年以上の実績を誇る老舗軍事雑誌(http://www.argo-ec.com/)。戦車雑誌として各種戦闘車両の写真・情報ストックを所有し様々な報道機関への提供も行っている。また陸にこだわらず陸海空のあらゆるミリタリー系の資料提供、監修も行っており、玩具やTVアニメ、ゲームなど幅広い分野で実績あり。
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