気球 VS 戦闘機 100年の戦い 「たかが風船」相手に人類はどれほど手を焼いてきたのか

アメリカによる飛行物体の撃墜が相次いでいます。気球にF-22戦闘機を発進させ対処したのはオーバーキル(やりすぎ)のようにも見えますが、この「気球対戦闘機」という図式は、実は100年前から変わらないものです。

気球は無人の大陸間横断兵器へ

 第2次世界大戦でも気球 vs 戦闘機の戦いはありました。

 日本は太平洋戦争末期に高空を吹く偏西風を利用した世界最初の大陸間横断兵器を実用化しました。「ふ号兵器」と呼ばれた風船爆弾です。アメリカ軍は対策に頭を痛めます。爆弾としては小型でしたが、生物兵器を搭載するかもしれないという懸念や心理的効果が大きかったのです。

Large 20230218 01
アメリカ陸軍機が撮影した飛翔中の風船爆弾(画像:アメリカ海軍国立博物館)。

 何とか発見、捕捉しようと、墜落した「ふ号」のレーダー反射率を調べてレーダーを調整しましたがうまくいきません。太平洋沿岸に電波受信サイトを設けて「ふ号」が発する電波を捕えようとし、95の疑わしい信号を検出するものの、そもそも送信機を持つ「ふ号」は少なく迎撃には役立ちません。

Large 20230218 02
1945年4月11日、アッツ島付近で撮影された風船爆弾を迎撃するP-38戦闘機のガンカメラ映像(画像:11th Air Force Fighter、Public domain、via Wikimedia Commons)。

 結局「ふ号」の発見はほとんど目視に頼るしかなく、戦闘機がスクランブル発進しても捕捉できることは稀でした。それでも約20機を撃墜したとされます。終戦後、GHQは日本の航空機研究を禁止しますが、その中には気球も含まれていました。

米大陸で風船爆弾が発見された場所を示した分布図。今回の中国気球の飛翔コースと類似している(画像:Robert C. Mikesh、Public domain、via Wikimedia Commons)。

 21世紀に入っても気球は戦闘機のライバルであり続けています。「バルーン・バスター」の称号は復活するのでしょうか。

【了】

【画像】これも文明開化! 浮世絵に描かれた国内初の軍用気球試験 ほか

Writer:

1975(昭和50)年に創刊した、50年以上の実績を誇る老舗軍事雑誌(http://www.argo-ec.com/)。戦車雑誌として各種戦闘車両の写真・情報ストックを所有し様々な報道機関への提供も行っている。また陸にこだわらず陸海空のあらゆるミリタリー系の資料提供、監修も行っており、玩具やTVアニメ、ゲームなど幅広い分野で実績あり。

最新記事

コメント

記事ランキング

  1. 「USB挿しっぱ」でクルマが“故障”する? 三菱公式の投稿にSNS騒然 「一体ナゼ?」「これマジで起きるよ」
  2. 都市に迫るロシア軍の「弾道ミサイル」が“空中で木っ端みじん”になる瞬間をウクライナ軍が公開 追尾から撃墜まで詳細に
  3. 海自艦がロシア海軍の「超静かな潜水艦」を確認!浮上航行する姿を捉えた画像を防衛省が公開
  4. 海自潜水艦 アメリカ海軍の“歴戦の揚陸艦”を標的に魚雷発射! 実弾演習で巨大な水柱があがる瞬間を公開
  5. 海自「イージス艦の相棒」が火を噴いた!ミサイル発射の瞬間を防衛省が公開 “強力な防空能力”を持つ汎用護衛艦
  1. 家族が「SSSS航空券」を引き当ててしまった…! 乗る前から“異変” 保安検査員も「Oh…」 誰でも起こり得る“緊迫の一部始終”
  2. ETCの手前で「ガシャン!」高速入口に吊るされた「黄色い鎖」の正体は? 傷つく覚悟で“あえてぶつける”超アナログな理由
  3. あと1年足らずで「現金でバス乗れなくなります」 全路線“完全キャッシュレス化”疑問に応えるサイト開設 京王バス
  4. ロシア軍の爆撃機が「真っ逆さまに墜落」 地上に激突する瞬間を捉えた映像が公開 “巨大な黒煙”が立ち上る
  5. 航行中の護衛艦「かが」の周辺に「巨大な海洋生物」が出現! 艦艇勤務ならではの光景を海自公式が公開