三式戦闘機「飛燕」茨城で蘇る 実機買ったけどあえて「レプリカつくろう」依頼人の思い

茨城県で旧陸軍の三式戦闘機「飛燕」のレプリカ製作が進行中です。手掛けるのは、各地の博物館や平和記念館で展示されている原寸模型をいくつも手掛けてきた立体広告製作会社。途中経過が公開されたので取材してきました。

岐阜とは別に国内に現存 もう1機の「飛燕」

 このように3000機以上、生産された三式戦闘機「飛燕」ですが、完全な状態で現存するのは岐阜県各務原(かかみがはら)市にある「岐阜かかみがはら航空宇宙博物館」で展示されている二型(キ61-II改)が唯一です。ただ、これとは別に、初期生産モデルである一型甲(キ61-I甲)の実機が岡山県にあります。

 こちらは、1970年代にパプアニューギニアのジャングルで発見された機体で、旧日本陸軍の飛行第68戦隊の所属機と推測されています。機体は不時着で大きく損傷しており、プロペラは曲って胴体や主翼はいくつかのパーツに分かれた状態でした。一時、オーストラリアのコレクターが所有していましたが、2017(平成29)年にネットオークションに出品されると、岡山県倉敷市でオートバイ部品・用品を製造・販売する株式会社ドレミコレクションの武 浩代表が落札。こうして日本へ里帰りしています。

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オーストラリアから里帰りして岡山県倉敷市で保管される三式戦一型甲(キ61-I甲)の実機胴体を計測する、日本立体の齊藤裕行社長(左)と株式会社ドレミコレクションの武 浩社長(右)。この二人から「飛燕」復元プロジェクトが始まった(齊藤裕行氏提供)。

 当初、武氏は戦争の理不尽さや矛盾を後世に伝える歴史の証として、また貴重な産業遺産として、各務原の二型(キ61-II改)と同じように復元することも考えていたようです。

 しかし、復元には膨大な予算と共に完成までに多くの時間がかかることが判明。また実機を作った高齢の元工員の方や関係者が「飛燕」を前に感動する様子を見て、残された時間に限りがあることも感じたといいます。そこで、実機(残骸)はこのまま保管して新たに全体像がわかる原寸模型を製作することが検討され、その製作元として既に実績のある日本立体に、白羽の矢が立てられたのでした。

 こうして動き出した「飛燕」復元プロジェクトは、まず同社の齊藤社長が倉敷で保管されている機体の採寸を行い、資料を取り寄せるところから始まりました。製作にあたっては、当初は10分の1サイズの骨格模型を作って細部を検討してから10倍へと拡大し、原寸サイズでの作業へと移行する方法が採られます。ただ、この場合だと当然ながら、最初に生じた誤差も10倍になるため、精度の維持には苦労があったそうです。実作業は2022年5月から始まり、冒頭に記したように今年2月の式典で作業途中の状態でお披露目されたのでした。

 まだ完成までに様々な労力を要すると思われますが、それでも数か月後には完成する予定です。茨城の地で誕生する「飛燕」の原寸模型は、歴史を伝える新たな語り部(かたりべ)となることは間違いありません。筆者も完成する日を楽しみに待ちたいと思います。

【了】

【後ろ姿はまだ見ないで】実物使って再現したコックピット内部ほか(画像で見る)

Writer:

1964年、香川県生まれ。イタリアやドイツ、日本の兵器や戦史研究を行い、軍事雑誌や模型雑誌で連載を行う。イラストも描き、自著の表紙や挿絵も製作。著書に「九七式中戦車写真集」や「イタリアの中戦車・重戦車写真集 」、「イタリア軍写真集」など。

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