なぜ電車を販売? そして精神科病院が購入? 東急8500系ついに旅立ち 「想定以上の経費」どうクリア

なぜ精神科病院が購入したのか

 作業員が指差喚呼しながら、8500系を慎重にトレーラーに載せます。作業開始から約20分。完了すると、クレーンは元の位置へ戻っていきました。

 安全確認を行い11時過ぎ、トレーラーに牽引された8500系が工場建屋を後にします。出入口は決して小さくないはずなのですが、トレーラーが顔を出し、続く銀色の車体には心なしか窮屈に見えました。

 屋外に出ると、構内はまるで自動車教習所のコースのようなS字カーブです。しかしトレーラーの運転手は巧みなハンドルさばきで、ゆっくりと20mの車両を牽引していきました。

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車両はおよそ30トン(2023年4月26日、大藤碩哉撮影)。

 車両を購入した社会福祉法人 新樹会の諏訪 智理事は、今日に至る経緯として「車両が1両販売されたことにまずは驚きました」と話しました。そのうえでクラウドファンディングをしてまで購入した理由について「想定より経費が多くかかるので支援いただくため、またクラウドファンディングを通じて、精神科医療について世間に広く知ってもらうため」としました。「用があってもなくても、誰もが気軽に精神科病院に行ったっていいじゃないか」というのが法人のコンセプトだそう。

 ただ本業ではないプロジェクトに、病院内からは当初、反対の声も上がったといいます。これに対しては、地域貢献にもなるという前出のコンセプトを説明し、車両を本気で活用していくという意思を示したのだそう。最終的には皆が納得してくれ、今や車両の到着を心待ちにする人もいるそうです。

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