最強戦車も“ハーフサイズ”に 米開発「ミニエイブラムス」は使えるのか 無人化で変わる戦い方

ロボット戦闘車技術はロシアの方が上?

 有人無人戦闘チームのコンセプトは、人間のリスクを最小化し理想的に見えますが、肝心なRCVの実用化は、同じ無人プラットフォームであるドローンのような無人航空機よりはるかに使用環境が複雑で、技術的ハードルが高いようです。アメリカ陸軍はハードウエア、ソフトウェアの実証を繰り返して、RCVが使い物になるのか2023予算年度中に見極めようとしています。

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シリアで実戦に使われたロシア軍のロボット戦闘車「ウラン9」。運用成績ははかばかしくなかった(画像:ロシア国防省)。

 ロシアはロボット戦闘車技術においてアメリカより先行しているとされ、シリアに「ウラン9」というロボット戦闘車を持ち込みました。市街戦で人間の代わりに先兵となることが期待されましたが、電波障害や機器不具合のため、結局は兵士が近くで面倒を見てやらねばならず、先兵どころか「お荷物」となり実用化には時期尚早と判断されています。実際、現行で戦闘が続くウクライナに、ロボット戦闘車が投入されている様子はありません。

 ロシア・ウクライナ戦争では当初、ロシア軍戦車が対戦車ミサイルやドローンで損害を受け、戦車はもう時代遅れだという「戦車不要論」が一部で喧伝されました。しかし実際には、戦車は戦場で主導権を握るためには必要で、ウクライナもロシアも戦車の補充に必死です。しかしNGCVには戦車は無く、RCV-Hや移動防護火力(MPF)という軽戦車のような戦闘車が構想されています。このコンセプトは正しいのでしょうか。

 アメリカのRCVは、技術的に実用化できる目途があるのかを今年度中に見極めることになっていますが、仮に目途があるとされても、予算や戦車の必要性が強調されるウクライナの戦訓によっては、コンセプトの見直しを迫られる可能性も否定できません。判断によっては、将来の戦車や戦闘車の進化の潮流が変わるかもしれません。

【了】

【公開!】「ミニエイブラムス」の使い方です(画像)

Writer: 月刊PANZER編集部

1975(昭和50)年に創刊した、40年以上の実績を誇る老舗軍事雑誌(http://www.argo-ec.com/)。戦車雑誌として各種戦闘車両の写真・情報ストックを所有し様々な報道機関への提供も行っている。また陸にこだわらず陸海空のあらゆるミリタリー系の資料提供、監修も行っており、玩具やTVアニメ、ゲームなど幅広い分野で実績あり。

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コメント

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3件のコメント

  1. 無線操縦ですとどうしてもラグタイムが0ではない。ジャミングで無効化されるなどのデメリットも。
    そうなると、次はAI戦車やAIドローンでしょうか。攻殻機動隊のような自立思考戦車とか出てくるんでしょうかね?。

    テクノロジーは戦争に依って進化する。

  2. カメラを通して映し出される映像とハッチから顔を出して感じ取れる周囲の雰囲気の把握には雲泥の差がある。
    戦車の周囲の状況把握という点ではまだ人に分があると思う。
    ただ、技術はもっと先を行っている。
    他戦車との情報リンクどころか、偵察ドローンや一人の兵士が得た情報すら味方全てにリンクされようとしている。
    戦車の周辺どころか戦場全ての情報がリンクされるようになれば、もう人が前線に立つ必要もなくなるだろう。
    無人機対無人機。
    あれ?戦争って何だっけ?
    無人機対無人機、つまり人が死なず無人機(資金)が尽きたら負け。
    企業間の争いと変わらない。

  3. 反動はどう抑えるんだろ?