戦争で「ダム破壊」なぜ?どうやって? 敵味方とも影響大 WW2や朝鮮戦争の「ダムバスターズ」たち
4t爆弾が「水切り」の如くぴょんぴょんと
このプランを実現するため、イギリス空軍は巨大なドラム缶型爆弾「アップキープ」を開発しました。これは、反跳爆弾と呼ばれるもので、低空飛行する航空機から逆回転をつけた状態で投下すると、ちょうど石投げの「水切り」のように爆弾が水面を跳躍しながら進みます。やがてダムの胸壁にぶつかり、それに沿って水中に沈むと、一定の水深で水圧信管が作動して起爆。その爆発で生じた大きな水圧によって胸壁を崩す、特殊な爆弾でした。
強大な水圧を発生させるために、「アップキープ」は約4tもあったので、それを搭載する爆撃機には、イギリスが誇る大型の戦略爆撃機アブロ「ランカスター」が選ばれました。そして爆弾倉が改造され、「アップキープ」に逆回転を与える特殊な装置を装着。しかも、高度約18mという超低空で投下しなければならなかったため、この任務に向けて特別に編成された第617中隊は、4発エンジンの「ランカスター」爆撃機を超低空で飛ばす訓練に明け暮れました。
攻撃目標には、ルール工業地帯のメーネダム、ゾルペダム、エーデルダムなどが選ばれ、今から約80年前の1943年5月17日、第617中隊は「チャスタイズ」と命名されたこの作戦に、特別改造の「ランカスターB.マークIII スペシャル」(タイプ464 臨時改造型)19機で出撃。見事ダムの破壊に成功しています。そのため、第617中隊は「ダムバスターズ」の愛称で呼ばれるようになりました。
この攻撃の結果、ダムは決壊。下流域約80kmにおよぶ地域に大水害が生じ、死者約1300名、操業が停止した軍需工場約125か所、流された橋25本、一時的に使えなくなった農地約3000ヘクタールという大損害をドイツに与えました。しかし、イギリス側も出撃した19機の「ランカスター」爆撃機のうち8機が撃墜されています。
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