戦争で「ダム破壊」なぜ?どうやって? 敵味方とも影響大 WW2や朝鮮戦争の「ダムバスターズ」たち

朝鮮戦争中には米海軍がダムを破壊

 一方、約70年前の朝鮮戦争中にダムを破壊したのはアメリカ軍です。1951年5月1日、アメリカ空母「プリンストン」を発艦したVFA-195(第195海軍戦闘爆撃中隊)所属のAD「スカイレイダー」艦上爆撃機8機が、Mk.13航空魚雷を用いて韓国の華川ダムを攻撃しました。放った魚雷のうち7本が命中して6本が起爆、ダムの部分破壊に成功しています。

 この戦果から、VFA-195は隊の愛称を従来の「タイガース」から、ダム破壊の「先輩」であるイギリス空軍第617中隊と同じ「ダムバスターズ」へと変更しました。

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朝鮮戦争中の1951年5月1日、華川ダムを攻撃するため魚雷を抱いて飛行する第195海軍戦闘爆撃中隊のAD「スカイレイダー」艦上爆撃機(画像:アメリカ海軍)。

 改めて、現代のカホフカ水力発電所ダムに視点を戻すと、今回の決壊はウクライナ軍とロシア軍のどちらをより利するのでしょうか。

 ウクライナにとっては、洪水とその後の泥濘(でいねい)によって流域のロシア軍の行動を制限するなどの効果があるものの、自国民に対する人的物的、双方の被害が大きすぎます。加えて、なによりも反転攻勢における自軍部隊の機動に悪影響を及ぼしかねません。

 一方、ロシアにとっては、洪水とその後の泥濘が南部におけるウクライナ軍の反転攻勢の抑制となるだけなく、その抑制効果により防御に配備すべき部隊をやや削減でき、それらの部隊を別の方面の戦線の防御に転用できるという、得るものの多い結果となる模様です。

 とはいえ2023年6月8日現在、まだどちら側がダムを決壊させたのかは判明していません。一日も早い回復と復旧が待たれます。

【了】

【巨大爆弾が跳んでる!】イギリス空軍が撮った反跳爆撃の様子を連続写真で

Writer: 白石 光(戦史研究家)

東京・御茶ノ水生まれ。陸・海・空すべての兵器や戦史を研究しており『PANZER』、『世界の艦船』、『ミリタリークラシックス』、『歴史群像』など軍事雑誌各誌の定期連載を持つほか著書多数。また各種軍事関連映画の公式プログラムへの執筆も数多く手掛ける。『第二次世界大戦映画DVDコレクション』総監修者。かつて観賞魚雑誌編集長や観賞魚専門学院校長も務め、その方面の著書も多数。

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