地上走れぬ「空飛ぶクルマ」は名乗る資格なし! 欧米で80年の歴史 最新型のエンジンはスズキ隼!?
eVTOLと「空飛ぶクルマ」は別モノだから
もう1つ、注目に値する「空飛ぶクルマ」は現在アメリカで開発が進められている「サムソン「スイッチブレード」です。サムソン社は西部オレゴン州に拠点を置く企業で、同社が開発中の機体は可変後退翼のように機体後部に格納した主翼を左右に広げて飛行機モードに転換します。機体は2人乗りで、その形状はスポーツカーを意識した流線形のデザインです。
地上では三輪車として走行するようになっており、機体後部にダクテッドファン形式の推進装置を装備しています。そのファンを駆動するエンジンはスズキのオートバイ「ハヤブサ」のエンジンを搭載していると発表されています。なお、2023年6月現在は、地上滑走試験中で、まだ初飛行していませんが、もう間もなくではと言われています。
このように、諸外国にはeVTOLとは全く別の、本家「空飛ぶクルマ」ともいえる乗りものがいまも存在し、開発が続いています。そのため、外観も構造もまったく異なる乗りものを勝手に「空飛ぶクルマ」と呼ぶことは止めるべき、と筆者は考えます。
「空飛ぶクルマ(Flying car)」も「電動垂直離着陸機(eVTOL)」も、ともに国際的に認知された用語です。その意味に従い、正しく分類しなければ、日本の「ガラパゴス化」はますます進み、最終的には国益を害することにつながってしまうのでは、と筆者は危惧しています。
【了】
Writer: 細谷泰正(航空評論家/元AOPA JAPAN理事)
航空評論家、各国の航空行政、航空機研究が専門。日本オーナーパイロット協会(AOPA-JAPAN)元理事
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