日野×三菱ふそう統合 日本のバスはどうなってしまうのか 細る需要 台頭する中国メーカー
ジェイ・バスの“ふそう”はあり得るのか
今回のニュースを受けてバスの現場では、「ジェイ・バスが製造するふそう車が出るのではないか?」などと憶測が飛んでいますが、限られた市場の中で、たぶんそこまでの新たな仕掛けはされず、坦々と従来の手法が続く可能性の方が高いと考えられます。比較的乗用車の造り方に近いマイクロバスなどは、モデルや製造工場の集約は考えられるでしょう。
逆に筆者の個人的な思いとしては、需要があるのにモデルが消滅してバス事業者が困っている小型(7m・9m)観光バスや9m観光バス、送迎タイプなどのラインナップを新たな協業の中で再構築してほしいところです。
EVの中国メーカー進出の中でどう動く?
前述のようにバスの脱炭素化の動きとしては、EVが主流となりつつあります。現状、EVバスは国内で150台ほどになっていますが、うち120台ほどを占めるBYDを含め、数台の国産改造車を除き中国メーカーまたは中国車をベースに国内で商品化した車両です。
中国メーカーはエンジンを主力とした自動車メーカーではなく、バッテリーなどの電装メーカーがEVバスを製造しているのが特徴で、電動車の基礎部分のノウハウに長けたメーカーがつくるメリットと信頼性が受け入れられている面があります。日野と三菱ふそうの経営統合がEVバスにどのような新たな道を開くのかは未知数ですし、まだ中国製EVバスも第1号のデビューから8年程度で耐久性やコストなど不明確な部分も多々ありますが、今後もしばらくは中国メーカーのEVバスの分野での台頭は続きそうです。
今回の経営統合に微妙に絡む問題として、日野の排出ガス・燃費試験の不正の問題がありました。日野はこれによるトラック・バスの出荷停止などで3期連続最終赤字となり、信用をかなり失いました。親会社のトヨタも支えるのは限界との報道ですが、この間にシェアを大きく奪われた部分があるのも事実です。
実は中国製EVバスの特に7m小型ノンステップバスが急速に増えたのには、日野一択の小型ノンステップバス「ポンチョ」が出荷できなくなったため、コミュニティバスの代替を控えていた自治体がこれを機に脱炭素へと、一気にEVへ流れた一面がありました。
かつて三菱ふそうも不正隠しで信用を失った時期がありますが、信用を取り戻すには大きな努力を必要とします。バス車両自体は一般消費者が選ぶものではないことが、危機感の欠如につながっているのかもしれませんが、新たな体制を機に、消費者(利用者・一般市民)と使用者(バス事業者)のニーズを見据えたバスづくりをしてほしいものです。
【了】
Writer: 鈴木文彦(交通ジャーナリスト)
1956年山梨県生まれ。フリーの交通ジャーナリストとしてバス・鉄道に関する論文や記事を多数執筆。国土交通省や自治体、バス事業者のアドバイザーや委員も務める。著書に『日本のバス~100年のあゆみとこれから』など。
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