「昼夜兼用」走りっぱなし! 世界唯一の万能特急電車ができるまで 構造上“致し方なし”な寝台が愛された?
昼と夜、全部賄っちゃえばいいじゃない
581系が登場した1967(昭和42)年は高度経済成長時期であり、輸送需要が大幅に増加していました。車両を増発するにしても車両基地が不足しており、車両数を簡単に増やせない状況だったのです。そこで昼行と夜行をひとつの車両で賄えば、1日中稼働させられて、この問題を解決できます。
当初、この新型電車は「急行用」として想定されました。側廊下式で枕木方向に3段寝台が伸びる10系寝台車の居住性を改善して、昼間運行を担わせようとしたのです。
しかし急行列車の所要時間では、昼行と夜行の設備転換や、車両整備の時間が取れないと判明し、この新型電車は「特急用」に計画変更されました。当時の特急電車は、1等座席車(1969〈昭和44〉年よりグリーン車)と食堂車が連結される地域の代表列車であり、高い居住性を求められる存在でした。
昼間の居住性を重視したことで、寝台電車は当時の開放型1等寝台車(1969年よりA寝台車)と同じ、中央通路で左右に向かい合わせ座席が配置されたプルマン式寝台となりました。向かい合わせ座席の背もたれを分割し、座面に移動させて下段寝台を作り、その上に昼間は折りたたまれていた中段寝台と上段寝台を展開する構造です。
下段寝台の寝台長を確保するために、581系2等座席車(1969年より普通車)の座席間隔は190cmとなりました。これは、当時の代表的な特急形電車481系の座席を向かい合わせにした時の182cmや、0系新幹線の188cmを上回るものでした。
581系座席車の座席状態は、ゆったりとした重厚な座り心地でした。テーブルは座席間の窓側と、通路側肘掛けの両方に設けられていましたし、壁面にも肘掛けが備わり、座席としての出来栄えは481系に勝るものでした。
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