「昼夜兼用」走りっぱなし! 世界唯一の万能特急電車ができるまで 構造上“致し方なし”な寝台が愛された?

万能なのになぜ衰退した?

 581系は好評を博し、翌年(1968〈昭和43〉)に直流・交流50/60Hz対応車両として583系が登場しました。しかし、当時は昼行特急でも8~12時間走る列車が多く、向かい合わせ座席は不評でした。寝台も1974(昭和49)年4月に登場した、24系25形の登場で陳腐化します。25形は2段式寝台のため、寝台幅70cm、高さ111cm(上段95cm)、長さ195cmと583系よりもゆとりがあり、寝台料金は4500円と500円しか差がなかったのです。

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京都鉄道博物館で展示されている581系の先頭車、クハネ581形35号車(安藤昌季撮影)。

 581・583系は昼夜兼行で運行されたことで走行距離が長くなり、ブレーキや車輪の摩耗が激しく台車にも負担がかかりました。また、走行機器が481系よりも重く、遠心力も大きい車体ゆえに、レールへの負担も大きいという問題を抱えた車両でもありました。

 こうしたこともあり581・583系は、昼行特急からは新幹線の開業で、寝台特急からは2段式B寝台車の普及で運用が減少します。一部は近郊形電車419・715系に改造されました。

 残った583系のうち、大阪~新潟間の夜行急行「きたぐに」に投入された車両には、3段寝台を2段寝台へと改造したA寝台車が誕生しました。寝台サイズは下段が幅102cm、長さ190cm、高さ120cm、上段が幅90cm、長さ190cm、高さ100cmでした。

 2017(平成29)年まで50年の長きにわたって活躍した581・583系は、国内では先頭車両が京都鉄道博物館と九州鉄道記念館(近郊型に改造)にて保存されています。

 なお現在、581系で唯一現存する食堂車サシ581形31号車については、千葉県の鉄道車両保存施設「ポッポの丘」での保存を目指して、クラウドファンディングが行われています。成立した場合は食堂設備を活かして、軽食を楽しめる飲食スペースとしての活用が考えられているようです。

【了】

【え、寝心地…】世界唯一の寝台電車の車内です

Writer: 安藤昌季(乗りものライター)

ゲーム雑誌でゲームデザインをした経験を活かして、鉄道会社のキャラクター企画に携わるうちに、乗りものや歴史、ミリタリーの記事も書くようになった乗りものライター。著書『日本全国2万3997.8キロ イラストルポ乗り歩き』など、イラスト多めで、一般人にもわかりやすい乗りもの本が持ち味。

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