「昼夜兼用」走りっぱなし! 世界唯一の万能特急電車ができるまで 構造上“致し方なし”な寝台が愛された?
世界的に見ても寝台電車は珍しい存在です。特に「昼夜兼用」となれば、約半世紀前に登場した581系が世界で唯一の存在でしょう。昼行も夜行も特急に相応しい設備を持たせた581系と、後継の583系について振り返ります。
親しまれた「パンタ下」の中段
また、2等(1969年よりB寝台)寝台車としても581系は画期的でした。中段・上段寝台は幅70cm、長さ190cm、高さ68cmでした。当時の特急用寝台客車として主力だった20系は幅52cm、長さ190cm、高さは下段84cm、中段74cm、上段76cmでしたから、かなり広くなりました。寝台料金は4000円であり、幅52cmの客車寝台と500円しか違わなかったので、大幅なサービスアップでした。
また、車両のパンタグラフ下には上段寝台が設置できないので、その部分の中段寝台の高さは103cmありました。これは客車1等寝台上段の93cmを上回る高さでした。寝台料金はほかの中段と変わらないので人気があり、「パンタ下」の愛称で親しまれました。いずれにせよ581・583系の寝台車は、電車の利点である発車時の衝撃の少なさから、寝心地がよかったと筆者(安藤昌季:乗りものライター)は思います。
なお1等座席車は当初、昼間は回転式リクライニングシートの1等座席車とし、夜間は2段式寝台の1等寝台車へと転換する構想でした。
この転換機能は、「前後にスライドする回転式リクライニングシートを装備し、背もたれをスライドさせフラットにしたうえフットレストと連結、下段寝台にする」「側壁から仕切りを出して寝台間を区切る」「上段寝台は折り畳み式で、外を見るための小窓が付く」ものが予定されていました。座席間隔が190cmと広いため、座席の後ろに荷物を収納する計画でしたが、モックアップを作る時間がなく断念されました。結局、通常の1等座席車が夜間も運行されたのです。
ただし、料金面では2等寝台と大差なく、夜行運転時でも「寝入っては困る」乗客を中心に愛好されたようです。
コメント