海自の“頼れる先輩”に? イタリアと日本、空と海で急接近のワケ F-35Bの運用で協力へ
いずも型に似た道をたどるイタリア艦
満載排水量2万7100tの空母「カヴール」は、いずも型(推定満載排水量2万4000t)よりもやや大型の艦で、F-35Bを運用する前提で設計されました。同空母はいずも型より一足早い2019年12月から、飛行甲板の耐熱性強化など、F-35を運用するための改修工事を実施しており、2021年3月末にはF-35Bが運用できる艦であるか否かを評価する、アメリカによる試験をパスしています。
イタリアでは2018年に成立したコンテ政権から現在のドラギ政権に至るまで、政権与党の一翼を担う左派政党の五つ星運動が、海軍と空軍のF-35の導入を取りやめる政策を掲げた(その後、年間調達機数の削減に方針転換)ことなどから、イタリア海軍はまだ3機しかF-35Bを保有していません。
しかしイタリア海軍には、「カヴール」と現在はヘリコプター揚陸艦となっている軽空母「ジュゼッペ・ガリバルディ」にて、STOVL戦闘機であるAV-8B「ハリアーII」を30年近く運用した経験があります。この経験値は海上自衛隊にとっても、大いに学ぶところがあるはずです。
またイタリア軍は空軍が導入するF-35Bを「カヴール」で運用する事も検討しています。航空自衛隊のF-35Bを必要に応じていずも型に搭載する海上自衛隊にとって、イタリア海軍は空軍機を海軍の艦艇で運用するノウハウを、共に構築していくパートナーになれるのかもしれません。
ところで、現在ヘリコプターやオスプレイが発着している海上自衛隊のおおすみ型輸送艦は、3隻とも艦齢が20年を超えており、近い将来、後継艦について考える必要があります。ここで、いずも型がドック入りで使えない場合や、同型が本来任務である対潜作戦に専念しなければならない場合に備えて、おおすみ型にF-35Bの運用能力を与えるか否かを考える必要があります。
かたやイタリア海軍は「カヴール」がドック入りなどで使用できない場合、F-35Bを搭載して空母としての役割を果たす強襲揚陸艦「トリエステ」を2019年に就役させています。イタリア海軍が同艦の運用で得た知見を海上自衛隊が共有できれば、おおすみ型後継艦の仕様の策定も、スムーズに進められるのではないかと筆者(竹内 修:軍事ジャーナリスト)は思います。
イタリアは近年、中国の覇権主義的な動きを警戒して、インド太平洋地域への関与を強めており、6月の哨戒艦「フランチェスコ・モロシーニ」の横須賀寄港も、その一環として行われました。海上自衛隊のF-35Bの運用における協力だけでなく、現在進められている航空自衛隊パイロットの教育委託、次期戦闘機の共同開発など、イタリアと日本の防衛協力は、ますます強固なものになっていきそうです。
【了】
Writer: 竹内 修(軍事ジャーナリスト)
軍事ジャーナリスト。海外の防衛装備展示会やメーカーなどへの取材に基づいた記事を、軍事専門誌のほか一般誌でも執筆。著書は「最先端未来兵器完全ファイル」、「軍用ドローン年鑑」、「全161か国 これが世界の陸軍力だ!」など。
コメント