未使用の特攻機!? 国内で唯一残る幻の軍用機「剣」を実見 使われなくてよかったかも…な突貫設計

旧日本軍は太平洋戦争末期の戦局悪化にともない、多くの飛行機を特攻機として出撃させました。そうした中、突貫設計で生み出されたものの、戦争には使われなかった機体が今も国内の倉庫に眠っています。

一式戦闘機「隼」と同じエンジンを搭載

 キ115 「剣」は、中島飛行機(現SUBARU)が設計・製造を担当した、1人乗りの単発エンジン機です。1945(昭和20)年1月に試作が始まり、2か月後の3月に早くも1号機が完成して、審査と量産が並行して行われました。

 当初の開発コンセプトは、本土上陸が予想されるアメリカ軍の船舶や上陸部隊に対して、大型爆弾を用いて対艦・対地攻撃を行う、1人乗りの小型高速爆撃機というものでした。そのため胴体下面に半埋め込み式で500kgまたは800kg爆弾1発を懸架する設計で、既存の一式戦闘機「隼」で使用され、余剰在庫となりつつあった1000馬力級のハ115(海軍名称:栄一一型)エンジンを搭載することが計画されます。なお、最高速度は550km/hを予定しました。また、アメリカに残された実機の主翼下面の付け根には、離陸時加速用の補助ロケットブースターの取り付け金具も見られます。

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茨城県つくば市にある国立科学博物館の資料棟で保管されるキ115 「剣」(つるぎ)のコクピットまわりの胴体部分。手前に見えるのは一緒に調査に参加した研究者の1人が持参した72分の1スケールの「剣」の完成模型(吉川和篤撮影)。

 しかし悪化する戦局に間に合わせるため、資材を節約しながら熟練工に頼らずとも短期間で大量生産できることも同時に求められた結果、単純な形状で鋼材や木材を多用した機体構造になります。しかも、戦局が急を告げる状況であったため、試作機を用いた試験は大幅に短縮されるとともに、後の生産性を向上させる目的で、当時の飛行機ではほぼ標準装備であった引き込み式の降着装置も省略し、主脚は投下後に回収する方式へと変更されました。このため同機は、旧日本海軍が開発したロケット機「桜花」と同様に、人間が乗ったまま敵艦に突入する、専用の特別攻撃機であるという説も出ています。

 ただ、一説によると主脚のない機体は、攻撃後に草原などへ胴体着陸することで人命の損失を防げるほか、エンジンを回収して再使用する運用法を考えだしたことで、むしろ機体下面の鋼板の厚さを増加する設計に変更したとも伝えられているため、純粋な特攻機ではないのかもしれません。

 とはいえ、まともな照準器も搭載されていない簡素な機体では、特攻任務への転用も大いに考えられます。それを裏付けるのは、採用後に予定していた名称です。旧日本海軍は、エンジンをより高出力なハ33(金星)に換装して「藤花」(とうか)と名付ける予定でしたが、この「花」の付く名は前出の「桜花」のように、海軍では特攻機を意味するものでした。

【これが茨城に眠る激レア機です】未組立で保存されている「剣」&組み立てた状態も(写真)

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