空自F-35の基地をオーストラリアへ “遠さ”が武器になる理由 でも法的に問題ないの?

法的な問題はあるのか

 こうなると、自衛隊の戦力は一気に低下し、中国空軍の戦闘機に南西諸島上空の優勢を奪われてしまいます。そこで、事前に一定の航空機を中国軍のミサイルが届かない場所に分散退避させておけば、地上で一気に戦力が撃破される心配はなくなります。平時から海外に一定の戦力を置いておくことで、少なくとも開戦時に、中国軍が航空自衛隊の戦力を壊滅することはできなくなります。

 つまり、オーストラリアは航空自衛隊にとっての聖域として機能することが考えられるのです。こうした動きを見据えてか、日本とオーストラリアの間では近年、双方の航空機同士の空中給油を円滑に行うための「日豪空中給油に関する覚書」や、部隊の相互訪問や相手国内での活動をしやすくする「日豪相互円滑化協定」などが結ばれています。

 ところで、日本の自衛隊が他国の拠点から活動することについて、法的な問題はないのでしょうか。

 従来の政府見解などを見返しても、憲法をはじめとした国内法上の問題は生じないと考えられているようです。では国際社会のルールである国際法上はどうでしょうか。この点については、伝統的な国際法上の「中立制度」の観点から見ていく必要があります。

 中立制度とは、戦争をすることがまだ違法とされていなかった時代に発展したものです。国家間で武力紛争が発生した場合、戦いを交えている国(交戦国)と、それ以外の国(中立国)という分類が自動的に行われ、中立国には交戦国を公平に扱うこと(公平義務)と、戦いに関わらないこと(不関与)が求められました。そのうえで、中立国にはいくつかの義務が課されたのですが、そのひとつに「防止義務」があります。これは、中立国の領域を交戦国が軍事目的で使用することを防止する義務です。

 となると、もしオーストラリアが中国との武力紛争に加わらず中立国となった場合、オーストラリアが自国軍の基地を自衛隊のために提供することは、この防止義務の観点から問題となるように見えます。有事の際に日本は、オーストラリア国内の基地を使用できなくなってしまうのでしょうか。

オーストラリア空軍のF/A-18「スーパーホーネット」に乗り込む空幕長

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