「機体をB-29にぶつけろ」 無理難題に挑んだ戦闘機「屠龍」 精鋭パイロットを多数輩出
同機でB-29と戦えるパイロットは最精鋭
B-29を撃墜するためには、有利な位置や高度で遭遇できるように、地上施設の協力は不可欠でした。そのため、地上からサーチライトや高射砲の支援を得るために、無線電話による緊密な協同体制を作ることが重要で、それらの情報を処理しつつ、B-29に肉薄し攻撃することができるという、かなり錬度の高い操縦員が求められました。
特に山口県下関市小月飛行場に駐屯する「屠龍」が配備された第12飛行師団隷下の第4戦隊は、対B-29の本土防空部隊としては日本一の精鋭部隊と称され、B-29を多数撃墜した樫出勇大尉を筆頭に多くのエース・パイロットを輩出しました。
一方で、「屠龍」の搭乗員はときに、B-29を“ぶつけてでも止めろ”といわれました。文字通り、体当たりしてB-29を撃墜せよということです。震天制空隊という体当たり専門の部隊まで編制されました。
しかし、それは特攻のようにパイロットの命を引き換えに戦果をあげる必死の攻撃ではなく、故意に敵にぶつける直前や直後に機体を放棄し脱出する「エアラミング」と呼ばれる戦法で、当時ドイツ軍も行っていたものでした。「屠龍」の搭乗員は練度が高く貴重なため、簡単に失うことができません。体当たりした場合でも、落下傘などでどうにかして脱出すること求められていました。
戦争も最終盤となると、B-29にP-51「マスタング」が護衛につくこととなり、「屠龍」単独でも昼間の戦闘は自殺行為になります。それでも、夜間においてはレーダー未搭載で目視に頼らざるを得ない状態にも関わらず、終戦まで戦い続けました。
【了】
Writer: 斎藤雅道(ライター/編集者)
ミリタリー、芸能、グルメ、自動車、歴史、映画、テレビ、健康ネタなどなど、女性向けコスメ以外は基本やるなんでも屋ライター。一応、得意分野はホビー、アニメ、ゲームなどのサブカルネタ。
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