74式戦車も愛用! 100年選手の傑作戦車砲L7 世界のスタンダードになったワケ
100年以上使われることは間違いなし
このように、東西冷戦真っただ中の1960年代に西側諸国の戦後第2世代MBTの標準戦車砲となったL7は、ドイツやアメリカが自国戦車に採用したことでNATO(北大西洋条約機構)の標準戦車砲へと昇華。その結果、傑作戦車砲になり、いまでも多用されているのに繋がっているといえるでしょう。
砲がNATO標準となれば、おのずと弾薬もNATO標準規格となります。そうなると、弾薬メーカーもその規格で開発するようになり、より強力だったり汎用性に富んでいたりする弾薬が、イギリス以外の国でも開発・採用されています。
その結果、105mm砲L7をライセンス生産した国におけるローカルな弾薬であっても、それらのほとんどは互換性があり、どこの国のL7でも撃てるという強みがあります。
さすがに現在では、新型かつ高性能なNATO標準戦車砲としてラインメタル 120mm滑腔砲があるものの、105mmライフル砲L7も最新戦車の正面装甲以外なら貫通可能な威力をいまだ持っています。だからこそ、陸上自衛隊も16式機動戦闘車の備砲に105mmライフル砲を採用したのです。
なお、16式機動戦闘車に限らず、アメリカの最新戦闘車両であるM10「ブッカー」にも、同じ弾薬を使用する105mm砲M35が搭載されています。これもまた、105mm砲L7の血を引く派生型です。
さらに中国の15式軽戦車や05式水陸両用戦車などの備砲も、105mm砲L7を基にした派生型です。これらは、今後もしばらくのあいだ使われ続けることは間違いないため、ひょっとしたら105mm戦車砲L7は、派生型含め2050年以降も使われ続けているかもしれません。
「100年使われる戦車砲」になるかもしれないロイヤル・オードナンス105mmライフル砲L7。これこそ、まさにグローバルスタンダード(世界標準)、かつ、ご長寿と呼ぶに相応しい砲といえるでしょう。
【了】
Writer: 白石 光(戦史研究家)
東京・御茶ノ水生まれ。陸・海・空すべての兵器や戦史を研究しており『PANZER』、『世界の艦船』、『ミリタリークラシックス』、『歴史群像』など軍事雑誌各誌の定期連載を持つほか著書多数。また各種軍事関連映画の公式プログラムへの執筆も数多く手掛ける。『第二次世界大戦映画DVDコレクション』総監修者。かつて観賞魚雑誌編集長や観賞魚専門学院校長も務め、その方面の著書も多数。
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