有人特攻兵器「桜花」に“生きて帰れる仕様”があった 製造2機のみ なぜ米国で展示へ?

米本土アリゾナ州に、現存唯一といえる日本製の激レア機があります。それは旧海軍が開発したロケット機「桜花」の複座型。この仕様は2機しか作られなかったそうですが、なぜここにあるのか、誕生から展示までの経緯をひも解きます。

廃棄から奇跡の復活→歴史の生き証人へ

「桜花」の派生型は43乙型以外にもいくつか計画されていましたが、大戦末期の混乱と物資不足から、ほとんどが計画のみで終わっており、43乙型も実際に生産されることはありませんでした。

 しかし、11型を中核に練習機を含めて約800機の桜花が生産されており、それらのうち何機かは終戦後にアメリカ軍が接収して、その他の航空機とともに調査のために本国へ送っています。

 ピマ航空宇宙博物館に現存する「桜花」K-2もそのうちの1機でしたが、当初の扱いは世界で唯一の現存機としては考えられないほど乱雑なものでした。なんと手続きの問題で廃棄扱いとなってしまい、廃品置き場に長らく放置されていたのだとか。

 幸い、1974年にアメリカの学術文化研究機関である国立スミソニアン協会に管理が移管されたことで、機体がこれ以上破損することはなくなりました。しかし、それ以前の破損はいかんともしがたく、たとえば現在の「桜花」K-2の機体表面、とくに胴体側面の日の丸を中心とした部分には破損によって無数の穴が開いていますが、これは実戦の損傷などではなく、博物館関係者によると「放置されていたときに、心ない人間が悪戯(いたずら)で銃か何かを撃ち込んだ跡」だそうです。

 また、廃棄扱いになったため、この機体に関するアメリカ側が記した資料・履歴はほぼ残っていないのだとか。そのため筆者(布留川 司:ルポライター・カメラマン)がピマ航空宇宙博物館を訪れた際も「たぶん、この機体については日本人の君(筆者:布留川 司)の方が知っていると思う」と言われたほどでした。

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前後に並んだ操縦席。キャノピーの前部のフレーム部分はそのまま残っており、一番手前には体当たりで使う照準器の基部も確認できる(布留川 司撮影)。

 現在、「桜花」の現存機で博物館等に展示されているのは、アメリカ、イギリス、インド、日本に15機ほど。そのなかで、激レア機である43乙型は、2012年に現在のピマ航空宇宙博物館に貸し出され、2018年頃から常設展示されるようになっています。

 特攻兵器という性質上、この機体に対する評価は時代ごとで大きく異なるといえるでしょう。しかし、残された本物の機体が今でも実際に見られることは、当時の状況を客観的に知るうえで重要な存在だと筆者は考えます。

 ちなみに当時の連合軍は、「桜花」をコードネームで「BAKA Bomb(バカ爆弾)」と呼んでいました。そこに込められた意味は、英語で「愚か」を意味する「foolish」や「idiotic」で、それに対応した日本語として選ばれたのが「バカ(馬鹿)」だったそうです。ただ、それは単純な「桜花」への中傷というよりも、当時の日本がそのような兵器を新たに開発したこと、そのような戦略思想そのものに対する皮肉だったのかもしれません。

【了】

【これはひどい…】いたずらで日の丸に開いた無数の穴&レストア中だからこそ見られた操縦席(写真)

Writer:

雑誌編集者を経て現在はフリーのライター・カメラマンとして活躍。最近のおもな活動は国内外の軍事関係で、海外軍事系イベントや国内の自衛隊を精力的に取材。雑誌への記事寄稿やDVDでドキュメンタリー映像作品を発表している。 公式:https://twitter.com/wolfwork_info

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