そっち向きに飛ぶの!? 異形の旧海軍機「震電」 ぶっとんだ設計のワケ

新作映画『ゴジラ-1.0』に、ゴジラに対峙する兵器として、旧日本海軍の局地戦闘機「震電」が登場します。ただ史実では、「震電」は敵重爆撃機への迎撃機として生産されました。地上にいるゴジラに、果たしてどこまで有効でしょうか。

初飛行は終戦の12日前

 開発は急ピッチで進められますが、ネックとなったのが最大の特徴である、後部にプロペラがあるという形そのものです。

 地上滑走では、車輪が巻き上げた泥や小石など異物(FOD)がプロペラに当たります。脚は長くて貧弱です。機銃の空薬莢は排出するとプロペラに当たるため、機内に回収せざるを得ません。脱出時には乗員すら巻き込まれる危険性があり、プロペラを簡単かつ確実に離脱できる機構が必要です。

 以上のように、「震電」には牽引式機体にはない要素が多く要求され、構造は複雑化し重量も増加しました。初飛行前の地上滑走試験では機首を不用意に持ち上げたため、プロペラが接地して羽が曲がる事故を起こしています。

 こうした難題を何とかクリアして、終戦12日前には初飛行に漕ぎつけますが、実機の試験飛行はわずか3回で合計飛行時間は1時間程度。期待の性能を発揮できたのかはわかりません。

 架空の1947(昭和22)年、ゴジラ駆除に駆り出された「震電」は対地攻撃を行います。武装は強力ですが、先述の一撃離脱戦法を旨とする「震電」に、低空を低速で反復攻撃する対地攻撃は不向きです。

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後部から見た「震電」(画像:サンディエゴ航空宇宙博物館)。

 異形の「震電」は実戦に間に合いませんでしたが、21世紀になっても映画に登場するなど多くのインスピレーションを生み続けています。極秘兵器のはずだったのに人目を気にしなかったようにも見えるのは、関係者は終戦の気配を感じており、戦争には役立たずとも戦後に続く何らかの刺激になることを期待していたのかもしれません。

【了】

【写真】いま、日本で見られる「震電」

Writer:

1975(昭和50)年に創刊した、50年以上の実績を誇る老舗軍事雑誌(http://www.argo-ec.com/)。戦車雑誌として各種戦闘車両の写真・情報ストックを所有し様々な報道機関への提供も行っている。また陸にこだわらず陸海空のあらゆるミリタリー系の資料提供、監修も行っており、玩具やTVアニメ、ゲームなど幅広い分野で実績あり。

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